2025年、様々な事件・事故がある中、最も被害が急増したのが「ニセ電話詐欺」だ。長崎県での被害件数は11月末時点で201件、被害額は5億円を超え、過去最悪のペースで拡大している。被害額の6割を占めているのが「警察官をかたった詐欺」だ。
「警視庁」名乗る人物から国際電話が…
2025年10月、かかってきた1本の電話。
長崎県西彼杵(にしそのぎ)郡時津町に住む女性の携帯電話に、「+」で始まる国際電話がかかってきたのだ、
地名の「西彼杵」が、犯罪を食い止めるポイントになった。
「福井県警の方で“サワムラカズキ”を主犯とする特殊詐欺グループの捜査を進めていまして」
「大量の他人名義のキャッシュカードや携帯電話を押収しています」
「福井県警では女性がサワムラのグループ資金洗浄に加担しているのではという容疑がかかっています」
相手は、警視庁の「オオタニ」と名乗る人物。捜査中に押収した女性名義のキャッシュカードが振り込め詐欺の振込先として利用されているとして、女性に資金洗浄に加担している容疑がかかっているという筋書きだ。
「西彼杵郡」地名が読めずにアウト!
女性はすぐに詐欺と気付いたが、やりとりを続けた。
男「まずこちらで登録されている住所を読み上げますので、一緒に確認をお願いします」
男「西彼・・西彼、なんと読むんだろう?…「にしかれ・・・」なんとかという住所ですか?」
女性「それって電話で伝えないといけないんですか?」
男「いえあのー、別にお答えしたくないことは、お答えしなくてもいいんですが」
女性「じゃあ答えないです」
毅然とした態度で対応したのは、警察官の妻・阿比留加奈子さんだった。
「にしかれ…こっちに“にしそのぎぐん”って言わせたかったんでしょうね。その後の番地は合っていたので、怖い。住所を知っていたんです」。
夫が警察官であることを伝えると電話は切られ、阿比留さんは被害に遭わずにすんだ。
「ビデオ電話で取り調べる」は絶対にない!
12月12日、警察官をかたったニセ電話詐欺で、巨額の被害が出た。平戸市の80代の女性が、時価合計4億円相当の純金インゴットをだまし取られたのだ。
詐欺グループが悪用しているのが「LINEのビデオ通話」だ。まずは電話で居住地から遠い警察に呼びだし、「行けない」と断るとビデオ通話に誘導。警察官役がニセの制服と警察手帳で信用させ、金銭や個人情報をだまし取るという手口だ。
県警察本部生活安全企画課の坂本卓也調査官は「警察官がLINEやテレビ電話に誘導して事情聴取をする、取り調べすることは100%ないのだが、何も情報がないと“最近の警察はリモートで取り調べをするのだ”と信じてしまう。今年は特に若い世代が被害にあっている」と話す。
被害急増「オレオレ詐欺」多くは海外からの電話
さらに12月に入ってからは、息子をかたったいわゆる「オレオレ詐欺」の被害が急増している。坂本調査官は「十数年前、昔はやった手口。相談件数・被害が急激に伸びている」と話す。12月18日現在で被害も10件以上、不審電話の相談は数100件レベルで県警に寄せられている。
認知されていないものを含めると、数千件・数万件とも見られるニセ電話詐欺。
県警は「“怪しい電話には出ない”を徹底してほしい」と呼びかけている。
ニセ電話詐欺の電話はその多くが海外からという。「+」からの番号には出ないことが一番だ。県警は「国際電話利用休止手続き」の利用も勧めている。NTT、ソフトバンクなど大手通信事業者が共同で展開しているこのサービスは、固定電話の国際電話の発着信を無料で休止できるもので、WEBと電話で簡単に申し込みができる。実家にかかってくる詐欺対策として検討してみてはどうだろうか。
警察署の電話番号を偽造するケースも
最近では、末尾が「110」や実在する警察署の電話番号を偽造して表示するケースも増えている。12月はお金の出入りが活発になり、いわゆる詐欺グループの「稼ぎ時」とも言える時期だ。
手口などを知っていて最初は疑っていたにも関わらず、電話が2〜3時間にも及ぶと「こんなに時間をかけるはずない」と思ってしまい、警察と信じてしまってお金を騙されるケースもあるという。相手は「騙しのプロ」。引き込まれてしまわないように、まずは知らない番号には出ない、表示されている番号が警察だとしても、100%信用するのは危険かもしれない。
(テレビ長崎)
