もちろん「収穫したてがおいしさのピーク」というお米もあれば、「半年以上経ってから味がのってくる」というお米もあります。それでも、「年明けから春先ごろが食べごろ」というお米が多くの傾向だと感じています。

ただし、温度と湿度が管理された環境で玄米保管(あるいは籾保管)されることが大前提です。それでも、玄米は呼吸をしながら緩やかに劣化しているため、備蓄米のように夏を2回以上越すと、味わいの劣化は顕著に感じられると言えるでしょう。

家庭で玄米を保管するコツ

家庭で玄米を保管するときも、密閉できる容器や袋に入れた上で、冷蔵庫に入れることをおすすめします。

温度が高いと玄米の呼吸が活発になることで、でんぷんを消費して味が落ちてしまうほか、ぬか層の酸化が進んで古米化してしまいます。また、一般的な冷蔵庫の湿度はお米の保存に適した湿度よりも低く、密閉せず冷蔵庫に入れてしまうと、お米が乾燥するだけでなく、匂い移りや水濡れのリスクもあります。

多くの場合は「紙袋(かみたい)」と呼ばれる米袋で玄米保管される
多くの場合は「紙袋(かみたい)」と呼ばれる米袋で玄米保管される

玄米は呼吸しているので、容器や袋には、アルミ製よりも空気などの気体の透過性が良い樹脂製がおすすめです。樹脂製の容器や袋に入れた上で、冷蔵庫の野菜室で保管するのがベストだと感じます。

ただ、年明けのお米を味わうために家庭で玄米を数カ月にわたって保存するよりは、年明けに新たにお米を購入することをおすすめします。家庭の冷蔵庫は開閉も多く温度変化の影響を受ける可能性もあるため、数カ月にわたる保存の場合は温度と湿度が管理された環境下で保存されたお米がより本領を発揮できると感じています。

その年に初めて新米を食べるとき、普段は味噌汁やおかずから食べ始める人であっても、多くの人はまずは白飯を数口食べて新米の味わいを堪能してから、味噌汁やおかずに箸を移すのではないでしょうか。

(イメージ)
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以前、提供された新米の白飯を一口も食べずにキムチをどかっとのせた知人に対して周囲から「シンジラレナイ!」という声があがっていたことを思うと、新米はまずは白飯や塩むすびなどまっさらな状態で食べるものと思っている人が一定数いるのだと感じます。年明けのお米もぜひ新米同様にその味わいを白飯や塩むすびで味わってみてはいかがでしょうか。

米袋から「新米」シールがなくなると、なんだか急に新鮮さが落ちてしまったように錯覚する人もいるかもしれませんが、シールがなくなってからがおいしさの本領です。ぜひ年明けからもお米のおいしさを楽しんでいきましょう!

柏木智帆(かしわぎ・ちほ)
米・食味鑑定士、ごはんソムリエ、お米ライター

柏木智帆
柏木智帆

米・食味鑑定士/ごはんソムリエ/お米ライター。大学卒業後、2005年神奈川新聞社に入社、編集局報道部に配属。新聞記者として様々な取材活動を行うなかで、稲作を取り巻く現状や日本文化の根っこである「お米」について興味を持ち始める。農業の経験がない立場で記事を書くことに疑問を抱くようになり、農業の現場に立つ人間になりたいと就農を決意、8年間勤めた新聞社を退職。無農薬・無肥料での稲作に取り組むと同時に、キッチンカーでおむすびの販売やケータリング事業も運営。2014年秋より都内に拠点を移し、お米ライターとして活動を開始。2017年に取材で知り合った米農家の男性と結婚し、福島県へ移住。夫と娘と共に田んぼに触れる生活を送りながら、お米の消費アップをライフワークに、様々なメディアでお米の魅力を伝えている。また、米食を通した食育にも目を向けている。2021年から「おむすび権米衛」のアドバイザーに就任。
著書に『知れば知るほどおもしろいお米のはなし』(三笠書房)、『お米がもっと好きになる。炊き方、食べ方、選び方』(技術評論社)がある。