血気盛んな長嶋監督 灰皿蹴って足の指をねんざ伝説

徳光:
末次さんから見まして、ちょっと長嶋さんやっぱり変わったな、選手から監督っていうのはこういう変化なのかなということをお感じになったことあります?

末次:
やっぱり最初の監督の時ですよね。これの時はね、まだあのあれですよ、カッカカッカするっていうかね。
意気盛んっていうか、ダメなときはそのへんのある物をみんな蹴飛ばしてましたからね。

徳光:
蹴るって、どんなもの蹴るんですか?

末次:
いや、ヤカン。

吉田:
こんなヤカンあるじゃないですか、ヤカン。
麦茶入ってるんですよ。こんなでっかいの。それいっぱい入ってるんですよね。痛いんだけど、バカーンって蹴るんですよ。
それが1回、あれ張本(勲)さんがいる時だから優勝した時だな。
張本さんにお茶っ葉がバーンッて。
そういう時もありました。

末次:
本当、固定した灰皿を1回蹴って、親指ねんざされたこともありました。

徳光:
そうですか。固定した物を。

末次:
運動靴の指の先がこう切って、指だけこう出してあって。
これはまだ現役時代の感覚が残っているなと。そういう感じですよ。

吉田:
長嶋監督の1年目(1975年)最下位になったじゃないですか。
あの時本当、マスコミからもめちゃくちゃ言われたじゃないですか。
特にキャッチャーとしてはね。もう本当にボロクソに言われましたから。

吉田:
その次の年(1976年)、8月ごろにね、長嶋さんがね、「ヨシ、俺とお前のね、2人だけの(投手交代の)サインを作ろう」と言ってくれてね、なんかすごくね、緊張感が倍以上になりました。
でも本当にね、サイン出したらね、すぐ(ピッチャーを)代えてくれました。
それだけにすごく責任感というのかな、感じましたね。

徳光:
ということは、受けているおまえが一番分かるんだという、そういう信頼感があったわけですね。吉田さんに対してね。

吉田:
はい。

徳光:
オールスターにもお出になったんじゃないですかね。
選ばれましたよね、MVPにもその時、オールスターで。

吉田:
はい。
オールスターであれはね、ピッチヒッターに出る前に、相手のピッチリーターが村田兆治さん。
王さんと張本さんが「ヨシ、球速いから、もうね目つぶってね、ワンツースリーで打て」って。「わかりました。行ってきます」ていったら、本当に当たったんですよね。

徳光:
そうですか。

[1976年オールスター第3戦(大阪球場)
最終回代打で登場した吉田は2点タイムリー3塁打。MVPに選ばれた]

吉田:
MVPをもらって帰る時に、王さんが「ヨシ、きょうはもう、お前のために祝宴だ」って言って、全員で祝っていただきました。

徳光:
いい思い出ですね。

吉田:
いい思い出ですね。

徳光:
一番いい年だったかもしれませんね、これは。

吉田:
一番よかったですね。

徳光:
これで、森さんとは違う形で俺はキャッチャーになれたなっていうことは自覚があったんですか?

[1976年、吉田は自己最多の124試合に出場。初の規定打席にも到達、打率.260]

吉田:
そうですね。長嶋さんの時に優勝して、あれが一番の思い出ですよね。

吉田:
優勝した時の写真をね、僕は小林(繁)と抱き合うところあるんですけど、マウンド上で。あの写真が一番好きですね。