世界最大の小売業である米ウォルマートは、2005年から店舗を使った広告事業に取り組んでいる。ウォルマート・メディア・グループ(現・ウォルマート・コネクト)というメディア事業専門会社を発足したのが始まりで、2024年1月期に広告事業だけで34億ドルを稼ぎ出した。前年比の伸びは28%に達する。

米国で約4700店を展開するウォルマートは、米国民の9割を半径10マイル圏内に抱える店舗網が強みだ。週あたりの客数は1.5億人にのぼり、店舗に設置されたモニターなどのデジタルサイネージやセルフレジの画面をはじめ約17万台を広告媒体として活用する。

スーパーマーケットの店舗は、消費者と商品の出会いを創出する「メディア」としての性格も持つ。棚に並んだ商品やPOP広告で興味を持ち、その商品を買い物かごに入れた経験は誰にだってあるだろう。データやデジタルの活用により、店頭のサイネージやスマホアプリなどで「出会い(接点)」の機会を増やすことが可能になった。

デジタル化の恩恵は大きく、スーパーマーケットが以前から持っていたエディアとしての性格を増幅させ、新たな収入源を持たせることになった。

(※1)シーナ・アイエンガー『コロンビア大学ビジネススクール特別講義 選択の科学』櫻井祐子訳、文芸春秋、2010年

『なぜ野菜売り場は入り口にあるのか スーパーマーケットで経済がわかる』(朝日新聞出版)

白鳥和生
日本経済新聞社に入社。小売、卸外食、食品メーカー、流通政策などを長く取材し、『日経MJ』『日本経済新聞』のデスクを歴任。日本大学大学院で企業の社会的責任(CSR)を研究し、2020年に博士(総合社会文化)の学位を取得。2024年、流通科学大学商学部経営学科教授に着任

白鳥和生
白鳥和生

1967年、長野県生まれ。明治学院大学国際学部を卒業後、1990年に日本経済新聞社に入社。小売、卸外食、食品メーカー、流通政策などを長く取材し、『日経MJ』『日本経済新聞』のデスクを歴任。日本大学大学院で企業の社会的責任(CSR)を研究し、2020年に博士(総合社会文化)の学位を取得。2024年、流通科学大学商学部経営学科教授に着任