100%の客が「安い」と感じるのは…
スーパーマーケット業界を巡っては、EC(電子商取引)やドラッグストアをはじめとした異業種・異業態との競争が激しくなっている。生き残りを図るため、中小でも生産者との直接仕入れルーツを確立するなど、独自商品の品揃えに注力したり、ポイントカードを使って顧客を囲い込んだりと、知恵を絞っている。
中小のスーパーマーケットが大手に対抗する手段として、その昔に注目された価格戦略がある。米国の高級スーパーマーケットの経験則から導き出された、「ドロシーレーンの法則」という戦略だ。
この法則は、次のような消費者の購買心理がベースになっている。
・100品目中の18%の商品を安くしたら、85%の顧客が安いと感じる。
・100品目中の30%の商品を安くしたら、95%の顧客が安いと感じる。
・100品目中の48%を安くしたら、ほぼ100%の顧客が安いと感じる(※2)。
つまり、値下げする商品の割合をコントロールして「心理的な安さ」に訴える売価設定方法だ。すべての商品を安くしなくても、商品を選定し戦略的に値下げすることで、収益を確保しながら、効果的に安さを訴える。
この法則に沿った戦術をとっているのが、埼玉県を地盤とするヤオコーだ。同社はメニュー提案に力を入れるとともに、高品質の商品を扱うことで知られ、同業他社が定期的に視察に訪れるスーパーマーケットの代表格だ。
10年以上前から「価格コンシャス」というキーワードを打ち出し、比較的高価格の商品はそのままに、飲料やもやしなど他社が安売りする商品について、値ごろ感のある価格を設定している。
(※1)「最後の一押しは電子看板」日経MJ、2022年6月29日
(※2)日本商工会議所・全国商工会連合会編『販売士ハンドブック』カリアック
白鳥和生
日本経済新聞社に入社。小売、卸外食、食品メーカー、流通政策などを長く取材し、『日経MJ』『日本経済新聞』のデスクを歴任。日本大学大学院で企業の社会的責任(CSR)を研究し、2020年に博士(総合社会文化)の学位を取得。2024年、流通科学大学商学部経営学科教授に着任
