少子化や教師の働き方改革が課題となる中、部活動を地域で支える制度の全国での実施に向けた補正予算案が11月28日、閣議決定された。これまで学校単位で行ってきた部活動を地域主体にして、複数の学校から生徒を集めることを可能にするなど、子どもの活動機会を確保するほか、超過労働を強いられていた顧問の負担を減らすのが目的だ。
実際の部活の現場はどう変わっていくのか。全国に先駆けて、実証期間としてこの活動に取り組んでいる現場を取材した。

「ありがたい」増えた選択肢

この日、千葉県の柏市立柏の葉中学校で行われていたサッカークラブ「柏の葉SC」の練習試合。5歳の娘と見に来ていたのは、平日のサッカー部顧問・長谷川友一教諭(39)だ。

長谷川教諭は、部活動の地域展開が始まってから、土日に休みをとることができるようになったという。

長谷川教諭:
土日は、基本は娘と妻と休みをいただいているので、時々こうやって練習試合とか試合を見に来て、生徒の様子も確認しながら家庭の時間を大切にしています。娘が2歳ぐらいのちょうど子育てで関わってあげたいなという時に地域展開が始まったので、そこはありがたく思います。

サッカー部の顧問は休日を家族と過ごせるようになった
サッカー部の顧問は休日を家族と過ごせるようになった
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柏市では、全国に先駆けて、市内21の全公立中学校で休日の部活動を地域クラブに移行した。

運動部の顧問というと、土日も指導にあたるのが一般的だったが、こうした選択ができるようになったこともメリットだという。

また、生徒に子育ての話をすることができるようになったことも良かったと話す。

8校から集まったクラブ

一方、同じグラウンドで活動していた野球のクラブチーム「球友会」を教えていたのは、勤務先の学校に野球部がなかったため、自ら希望して「指導員」登録をした片岡佑太教諭(30)。

志願して「指導員」登録をした教諭も
志願して「指導員」登録をした教諭も

片岡教諭:
やっぱり部活動は教えたいと思って教師になった部分もあるので、こういう機会はありがたいと思います。やりたくてやっている子たちなので前向きにやってくれますし、我々もそういう子達に応えられるようにやりたいなって思っています。

8つの中学校の子どもが集まり野球クラブとして活動
8つの中学校の子どもが集まり野球クラブとして活動

この野球クラブは、地域展開だからこそできたチームだという。

高校で硬式野球部に入部したい中学3年生を対象に、市内8つの中学校から子ども達が集まっている。硬式野球の練習に慣れることを目的として、毎年夏が終わったころから中学校卒業まで活動しているという。

野球クラブの子ども達からは、「みんなで集まって野球ができて楽しい」「他の人達よりもちょっと先にうまくなれるのでいい」といった声が聞かれた。

野球クラブのメンバーからは「楽しい」の声
野球クラブのメンバーからは「楽しい」の声

また、サッカークラブの子ども達は、「それぞれの学校では11人が集まらず、試合に出られないので、合同チームで試合がたくさんできて楽しい」と笑顔を見せた。

学校単位ではチーム編成が難しいサッカー
学校単位ではチーム編成が難しいサッカー

一方で、中学校の教諭からは「種目によっては『学校単位で出て下さい』と言われて地域クラブでは出場しにくい」といった声や、「活動機会が減っているので、もっとやりたい子にはやらせてあげられる環境があればいいと思う」といった声も聞かれた。

サッカークラブで活動する一人は、「合同チームのため、練習場所の中学校に行くのが遠くて大変」と話していた。

こうした移動や送迎に関する負担を解消するための取り組みを行っている自治体もある。

奈良県平群町では、送迎バスを出す取り組みを始めた。

土曜日は中学生だけでなく高齢者も利用できるようにするなど、部活動改革をきっかけに地域のインフラとして重要な役割を果たしているという。