「アニメ・声優」や「フェンシング」も
「部活動の地域展開」で期待されることの中に、これまでの部活動にはなかった多種多様な体験ができるようになることもあるという。
東京・渋谷区では、学校ではできなかったスポーツや文化活動に参加できる「渋谷ユナイテッドクラブ」として、「フェンシング」「ボウリング」「eスポーツ」のほか、「アニメ・声優クラブ」「料理・スイーツ作り」など専門の指導者を活用した取り組みを展開している。
こうした生徒のニーズに応じたクラブ活動の形も今後は増えていくとみられる。
生徒減と顧問の負担増への対応
国は2023年度からの3年間で、実証事業を行ってきた。すでに全国の3分の1を超える自治体が取り組みを始めている。
来年度からの6年間で、原則すべての公立中学校で、休日の部活動を地方公共団体の教育委員会や地域のスポーツクラブ・文化芸術団体などが主体となる「地域クラブ活動」へ移行することを目指している。また、平日についても取り組みを加速させたい考えだ。
全国での実施に向けて、先日、国の新たなガイドラインがとりまとめられ、要件を満たした地域クラブを市町村が認定する「認定制度」を作ることなどが盛り込まれた。
認定を受ける要件として、「参加費を可能な限り低く抑えること」、「不適切行為の防止徹底」、「休日の活動時間は1日3時間程度とすること」などが示された。新たな認定制度の創設によって、生徒の大会やコンクールへの円滑な参加についても促したい考えだ。
さらに中学校の先生だけでなく、小学校の先生など、希望する教師が兼職兼業により指導できる環境を整備したり、人材バンクの設置を推進したりするなど、指導者確保のための仕組み作りも盛り込まれた。
課題は保護者の負担
全国展開に向けて、最大の課題は「保護者負担」だ。
子供たちの活動機会の確保のため、これまでの部活動と比べて経済的な負担が大きく増加しないようにすることが重要。柏市では参加費を保護者が負担しているが、経済的に厳しい家庭への参加費補助も必要になり、財源の確保や持続可能な仕組み作りが課題となっている。
「柏スポーツ文化推進協会」の藤崎紀仁代表は、「家庭の負担を下げるという意味では、企業や団体さんから財源の支援をいただけるような仕組みが作れるといいなと思っています」と述べた。
松本文科相は12月1日、テレビ各局のグループインタビューで部活動の地域展開の在り方について、「日本ではこれまで色んな努力や取り組みによって、子ども達がスポーツや文化活動に触れ合える環境を守ってきた」としつつ、「どういう形になろうとも、その環境は守っていくという方向で一生懸命、頑張って進めていきたい」と話した。
文科省は、保護者負担の目安額を年内にも示すとともに、経済的に厳しい家庭への支援も行っていく方針だ。
このほかにも、指導員が集まらないなど自治体ごとに課題は様々で、取り組みにも差があるのが実情だ。
国も、自治体を対象とした相談窓口の設置のほか、自治体の体制整備やクラブ活動の運営等への補助金を創設するなど支援を強化していて、こうした支援を活用しながら地域の事情に応じた部活動改革を進めることが求められている。
子どもたちが安心して活動できる環境をどう守っていくのか―地域や家庭、そして学校が共に考えていくことが問われている。
社会部(文科省担当):松川沙紀
