宮崎県と鹿児島県にまたがる霧島連山・新燃岳が6月22日、7年ぶりに噴火した。その後も活発な火山活動を続けていて、噴火を繰り返しているほか、火山性地震、火山性微動も多発している。新燃岳の直下で何が起きているのか。専門家に聞いた。

霧島連山のジオラマ。UMKテレビ宮崎の情報カメラは高原町役場にあり、新燃岳を24時間撮影している。噴火発生以降、テレビ宮崎では、YouTubeでライブ配信を行っている。
高原町役場から見ると、新燃岳を中心に、左側に高千穂峰、右側に韓国岳、その奥にえびの岳や硫黄山、という位置関係だ。

噴火が発生して、新燃岳は入山規制の噴火警戒レベル「3」に引上げられた。気象庁は、火口からおおむね3キロの範囲で大きな噴石などに警戒するように呼びかけている。
高原町では、規制の範囲外ではあるが、高千穂峰と矢岳に続く3つの登山道を独自の判断で規制。小林市は、登山道の一部が規制範囲にかかっている3つの登山道を規制している。県内ではこの範囲内に、民家や商業施設などはないということだ。

鹿児島地方気象台によると、新燃岳は6月22日に噴火した後も断続的に噴煙が出ていることが確認されていて、依然として火山活動は活発な状態だ。
新燃岳の地下深くには「マグマだまり」

宮崎公立大学の山下裕亮准教授が、今回の噴火と過去の噴火について解説する。

Q.今回の新燃岳の噴火について、どのように分析?
山下裕亮准教授:
新燃岳の地下深くには、マグマが蓄積されている場所「マグマだまり」がある。今回の噴火は、ここに溜まっていたマグマが火口方向に移動した可能性があるとみている。「マグマだまり」の上部にある地中の水分が「マグマだまり」に熱せられて勢いよく沸騰している状態。それが火山灰として放出されている。
Q.今後も、同様の噴火は続く?
山下裕亮准教授:
新燃岳は現在も膨張し続けている。「マグマだまり」も膨張していると考えられるので、小規模な噴火は、今後もこまめに起きるのではないだろうか。
過去の噴火との比較
Q.2011年や2018年の爆発的噴火が記憶に新しいが、こうした大規模な噴火とは何が違う?
山下裕亮准教授:
今回の小規模な噴火は、あくまで、新燃岳の「マグマだまり」からマグマが出てきて起こっているものだが、2011年や2018年のような大きな噴火は、えびの岳付近の地下にある「マグマだまり」が関係している。

山下裕亮准教授:
えびの岳付近には深さ約6キロ~8キロに「マグマだまり」があるとされていて、それは新燃岳の「マグマだまり」と地下にある「火道」でつながっている。過去の大きな噴火は、えびの岳付近のマグマが「火道」を通って、新燃岳から一気にドーンと出てきた。「マグマだまり」の長い距離を勢いよく通るほど、大規模な噴火になる。

山下裕亮准教授:
京都大学の観測によると、えびの岳の「マグマだまり」は、6月22日の噴火からすこし収縮したあと、この3日くらいかけてこれまでの数倍以上に膨れ上がっているのが確認されている。新しいマグマが溜まってきている。
実際、2011年の噴火の前に、えびの岳の下付近にある「マグマだまり」について、2006年から膨張が観測されていた。
今後の噴火状況へ「備え」を

Q.今後、2011年規模の爆発的噴火が起こる可能性がある?
山下裕亮准教授:
可能性はあるが、いつ起こるかはわからない。この機会に過去の噴火を思い出してもらって、次の噴火にぜひ備えていただきたい
地震と同じで、噴火もいつ起きるかわからない。起きてからでは遅いのが災害だ。命を守るために、しっかり「備え」をしておくことが大切だ。
(テレビ宮崎)