まあ、ほどほどの塩梅(あんばい)というのがなかなか難しいのですが、「ちょっと面倒くさいけど、仕方ないな」と思えるレベルのことが、適度なストレスとしてちょうどいいのではないでしょうか。

池田さんは朝食は毎朝自分で作っているという(画像:イメージ)
池田さんは朝食は毎朝自分で作っているという(画像:イメージ)

私は自分の朝食は毎朝自分でつくっています。カミさんは早起きで、私が起きるころにはとっくに朝食を食べ終えて、もう別のことをやっていますからね。

メニューはだいたい同じで、ご飯と味噌汁と、それに目玉焼きか卵焼きかオムレツをつけるだけですが、味噌汁に入れるキノコだとか野菜だとか、オムレツの中に入れる具材などを細かく切ったりするのは結構手間がかかります。

でも、いろいろ入れるほうが美味しいので、「仕方ねえな」と思いながらそこはちゃんとやるわけです。

朝食が終わったら庭に出て、夏は野菜を見回り、冬は鳥の餌を用意します。

うちの庭には、シジュウカラやヤマガラ、キジバトのほか、最近はガビチョウもやってくるので、ヒマワリの種を用意しておくと、結構食べにくるんですよ。

風呂掃除はおっくうだけど…

自宅にいるときは、原稿書きやらなんやらと夕方5時くらいまで仕事をして、そのあと焼酎とか日本酒を飲みながら夕飯を食べ終えると、私にはちょっとした仕事があります。

風呂の掃除は大変だけど…(画像:イメージ)
風呂の掃除は大変だけど…(画像:イメージ)

それは風呂に入ったあとの掃除です。湯船を洗って洗い場を洗って、最後は天井まできれいに拭くので、これがなかなか大変なんですよ。そのあとに飲むビールを楽しみに頑張りますが、30分くらいは優にかかりますからね。

まあ、私はあまり運動をしないので、いい運動代わりにはなっています。そのおかげで我が家の風呂はカビ一つありません。

鳥の餌を用意するのはともかくとして、朝食をつくったり、風呂掃除をしたりするのは面倒だと言えば面倒なのですが、あまり嫌ではない程度の面倒くささは、ちょうどいいストレスになるんですよ。

年を取るほどに精神的な面でも老いてくるのか、「面倒くさいな」と感じることが年々多くなり、新しいことを始めたりするのも億劫(おっくう)になったりします。

嫌なことをやる必要はないですし、むしろストレス過剰になって逆効果ですが、「ちょっと面倒くさいけど、仕方ないな」と思えるくらいのことであれば、できるだけやるほうがいいでしょうね。

心身ともにちょうどいい刺激となりますので、長生きにもつながりやすいと思います。

『老いと死の流儀』(扶桑社新書)

池田清彦
生物学者。東京教育大学理学部生物学科卒、東京都立大学大学院理学研究科博士課程生物学専攻単位取得満期退学、理学博士。現在、早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。高尾599ミュージアムの名誉館長。生物学分野のほか、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する著書がある。著書に『平等バカ』『専門家の大罪』『驚きの「リアル進化論」』(すべて小社刊)、『人間は老いを克服できない』(角川新書)、『「頭がいい」に騙されるな』(宝島社新書)、『老後は上機嫌』(共著:ちくま新書)など多数。

池田清彦
池田清彦

1947年、東京都生まれ。生物学者。東京教育大学理学部生物学科卒、東京都立大学大学院理学研究科博士課程生物学専攻単位取得満期退学、理学博士。山梨大学教育人間科学部教授、早稲田大学国際教養学部教授を経て、現在、早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。高尾599ミュージアムの名誉館長。生物学分野のほか、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する著書がある。フジテレビ系『ホンマでっか!?TV』などテレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。著書に『平等バカ』『専門家の大罪』『驚きの「リアル進化論」』(すべて扶桑社新書)、『人間は老いを克服できない』(角川新書)、『「頭がいい」に騙されるな』(宝島社新書)、『老後は上機嫌』(共著:ちくま新書)など多数。また、『まぐまぐ』でメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』を月2回、第2・第4金曜日に配信中。