全国で空き家が急増し、2023年時点で約900万戸に達した。7戸に1戸を占める規模だ。18日に大分市で発生した大規模火災では、焼失した住宅の約4割が空き家とみられ、被害拡大の要因になったとの指摘もある。空き家対策は喫緊の課題で、国会では税制を含む議論が進んでいるが、抜本的な解決は見通せない。
解体に500万円…壊したくても壊せず
「3、4年前の台風の時に、こういう風に(ボロボロに)なっちゃった。当時は壊すとなると300万円ぐらいだったんだけど、今だと500万円…」
空き家が増えているという千葉県いすみ市。家主たちが口々に語ったのは、取り壊すための解体費が捻出できないという問題だ。

「500万円もかかるとなると、この年になってからじゃきついわね」。ある家主は力なく語った。
家を建てた家主が取り壊し費用を払えないという問題の背景には、資材費や人件費の値上がりによる取り壊し費用の高騰が一因となっている。
また、過疎化が進む地域では、土地を売却しても解体費すら捻出できないケースもあるという。
踏み込めない行政
災害時に被害拡大を招く恐れもある危険な空き家を、家主が解体しないとしたら誰が取り壊すのか。
千葉県の54市町村を対象に、空き家の取り壊しを助成する制度がないか取材すると、制度があるのは全体の3分の1にも満たない15市町村のみだった。
制度を導入していない市町村からは「個人の所有物に関する財源的な問題を行政がどこまで介入していいのか議論が煮詰まっていない」、「自治体の財政上の負担が増えるから」などの声が聞かれた。
では、国が抜本的な対策をとる考えはないのか。
国交省は、「空き家対策は自治体が行うことで、国としては自治体が支払う助成金を一部負担する支援を続けていきたい」としている。
固定資産税が足かせに
空き家の取り壊しが進まない問題を巡っては、国会でも度々議論になっている。
緒方林太郎衆院議員は3月の衆院予算委員会で、「住宅が建っていれば、固定資産税が最大6分の1に軽減されるという今の税制に問題がある」と指摘した。
緒方林太郎衆院議員:
固定資産税は、家を建てれば減税、逆に言えば、家を壊せば、平地にすれば最大6倍も増税になるという仕組み。この仕組みが日本全国で空き家を増やしていると思います。
今の仕組みは、住宅が足らない時代に、土地を寝かせず住宅を建てようという政策目標からつくられたが、人口減少社会では、空き家を取り壊す動機がないというふうにブレーキになっています。

緒方議員は、制度自体が住宅が足りなかった1970年代に作られたもので、住宅が余っている現代にはマッチしていないと指摘したのだ。
この質問を受けて、村上誠一郎前総務相は「政策理念の転換が必要であり、固定資産税の在り方のみならず、住宅政策や土地政策も含めた幅広い見地から総合的に進めていく必要があると考えている」と述べた。

諸外国では放置空き家に課税
諸外国の空き家対策の例はどうか。
フランスの大都市では、一定期間以上空き家だと「空き家税」が課されるペナリティが設けられている。1年以上空き家だと、不動産評価額の17%、2年以上だと34%もの税金が課される。
アメリカでも、一部の州ではこうした「空き家税」を導入している。
ある政府関係者は、「空き家は行政コストのもと。減免どころかペナルティーがあってもいい」とし、空き家を放置するより更地にするほうが有利になるような制度に変えていくべきだと指摘した。
空き家が全国で増え続け、有効活用や取り壊しなどが進まなければ、2028年には4戸に1戸が空き家になるとの民間推計もある。
国として、時代に合った住宅や税金の制度を見直さなくては、根本的な解決は難しいと言わざるを得ない。
(調査報道統括チーム 阿部桃子)
