待ち合わせしていたら親が迷っていた。久しぶりに実家に行ったら冷蔵庫に同じものばかり入っていた。同じ話を延々と繰り返す…。
親の様子に違和感を持ち始めたら、それは認知症の始まりの“サイン”かもしれない。
『マンガで解決 親の認知症とお金が不安です』(主婦の友社)の著者である上大岡トメさんは、山口県で暮らし、両親は神奈川県にいる。
コロナ禍でしばらく実家に帰れなかったときに、電話でのやりとりでまずは父親の様子に違和感を持ったという。
本書では上大岡さんの体験をマンガで紹介し、さまざまな疑問を専門家が解説している。
監修を務めた認知症問題に詳しい、川崎幸クリニック・杉山孝博院長の「親が認知症かもしれない」と思ったときの家族の対応について、一部抜粋・再編集して紹介する。
いちばん不安なのは本人
「認知症だと認めたくないのはみんな同じ。それでも事実を受け止めて、前に進みましょう」
3分前に言ったことを忘れる、道具の使い方がわからなくなる、外に出たらなかなか帰ってこない……「お母さん(お父さん)ちょっとおかしくなったのでは?」と感じるのはそんなときかもしれません。
「親が認知症かもしれない」と考えるのはこわいことです。不安になるからこそ、「おかしな行動はやめてほしい」と望みます。まちがいをいちいち指摘したり、「また忘れたの?」と責めてしまったり、わかるまで何度も何度も言い聞かせたりしてしまうことでしょう。
それでもあまり効果はありませんよね。家族はどんどんつらい気持ちになってしまいます。腹が立ったり、顔を見たくないと思ったりします。
でも、いちばん不安なのは本人です。いちばん否定したいのも本人なのです。でも忘れてしまうし、できないことも増えていきます。わかっているからこそ、子どもにあれこれ言われたら腹も立ちます。悔しいし、悲しい。
認知症になったって、そういう当たり前の感情は残り続けるのです。そこを家族が理解しなければ、家族の関係がどんどん悪いほうに転がってしまいかねません。
