衆議院で開かれた予算委員会(2025年11月10日)。物価高対策として、近くまとめられる政府の総合経済対策を巡り、高市早苗首相は自治体の判断で使い方を柔軟に決定できる重点支援地方交付金の推奨事業に、おこめ券の活用を盛り込むか、検討していると明らかにした。

新米出ても高止まり傾向続くコメ価格
おこめ券は、コメ卸業者でつくる『全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)』のおこめ券や『全国農業協同組合連合会(全農)』が発行するおこめギフト券などがある。
いずれも1枚500円で販売されコメなどを購入する際は440円分として使用可能だ。差額の60円分は、印刷費や流通経費とされている。

福岡市西区のスーパー『サニー九大学研都市店』。国産の新米商品も数多く出回るなか、この日の店頭価格は、福岡県産『元気つくし』の新米が5キロ4731円。佐賀県産『ひのひかり』の新米は4947円で、銘柄米は5000円近くの価格帯となっている。

11月9日までの1週間に、全国のスーパーで販売されたコメ5キロ当たりの平均価格は前週より81円上がって、4316円と過去最高値を更新した。新米価格の高止まりが要因とされている。

新米が出ても高止まり傾向が続くコメの価格。買い物に訪れた女性は「(少し前は)備蓄米を買って、食べていました。新米は5キロ4000円台?高いですね」と納得いかない表情だ。

一方、この店舗では消費者の米離れを防ごうと1袋あたりの価格を抑えた新たな商品も売り出している。福岡県産『ゆめつくし』と『元気つくし』の3キロの商品だ。価格は3219円。店舗がある地域は学生や単身世帯が多いこともあり、少量で割安感のあるコメ商品を充実させて買い物客にアピールする狙いがある。

消費者も、小売り業者も、コメの値動きにより一層敏感となるなか、国が検討を進めるおこめ券。消費者の関心はあるのか。

買い物客に聞くと「最近ずっとカリフォルニア米を買っている。おこめ券をもし頂けるのであれば助かる。地元九州のコメを買いたい」(男性)や「配布が1回で5000円分でも家計が助かる。政策としてはアリと思う」(女性)などと歓迎する人も多い。

物価高対策としてのおこめ券の活用。県内の一部の自治体では子育て世帯や高齢者などを対象として既に、おこめ券の配布を進めていて、国は、こうした先行する取り組みを拡大する考えだ。
おこめ券ではなく現物5キロを支給
こうしたなか「町民、全てに1人ずつ、1人に5キロ、配らせて頂こうと思っている」と話すのは、福岡・筑前町の田頭喜久己町長だ。コメ作りが盛んな筑前町は、物価高対策の一環として、おこめ券ではなく現物のコメを配布する独自の政策を進めている。

対象は、全ての町民(人口約3万人)で1人につき5キロ。筑前町で収穫された新米を配る。「配布は1世帯ではなく、1人ずつ。所得での区分けや子どもの数で実施するとなるとさまざまな意見が出てくる。ここは公平に1人あたり5キロ配るべきと判断した」と話す田頭町長。コメ配布は、2024年に続いて2回目で、前回は町民の97%が受け取った。

こうした成果の裏付けもあり2025年も実施することになった。コメの購入費など約1億5000万円の事業費は、ふるさと納税による収入を主な財源としている。

田頭町長は、国が検討するおこめ券の活用について一定の評価をした上で、地域の特性を活かした対応も必要だと話す。「コメの利用促進という面では良いと思う。農業が盛んな町であれば現物支給の方が住民の方々に響くと思う」。

迫られる農政の抜本的な見直し
西日本新聞メディア戦略局長の池田郷さんは「物価高のなかで家計を助けるという分かりやすいメッセージとしてはいいかもしれないが、こうした政策によってコメ価格の高止まりが、助長されないか。また膨大にかかる事務費の原資は国民が負担することになる。それは果たしてプラスなのか。対処療法だとは思うが、“焼け石に水”となれば効果はマイナス」と話す。

コメ政策を巡っては、石破政権では増産に舵を切るという方針を打ち出したが、高市政権では一転、需要に応じた生産という方針に軌道修正している。コメ価格の適正な着地点を求めていくには、農政の抜本的な見直しが必要なのかもしれない。
(テレビ西日本)
