築59年となり老朽化が進む福井空港。開業当時は福井ー東京間をつなぐ定期便も就航していましたが、1976年に定期便が休航して以来49年、定期便の運航はありません。また、チャーター便は2003年から7年間就航した実績がありますが、そこから16年、運航がない状況が続いています。
   
こうした中、県は7月に再整備構想を策定。利活用拡大を図ろうと、チャーター便の就航を目指し、10月までに2回、新潟空港から福井空港への中型飛行機の試験飛行と搭乗体験が行われました。果たしてチャーター便の復活はなるのか取材しました。

◆トキエアが試験飛行

9月30日、福井空港に16年ぶりに中型の飛行機が着陸しました。新潟の航空会社トキエアが保有する46人乗りの中型プロペラ機ATR42ー600です。トキエアとして福井空港に向かう初の試験飛行は、新潟空港からわずか40分のフライトで到着しました。
   
長谷川政樹社長は「問題なく安全に運航できた。飛行機で結ばれ、人の交流でお互いの地方都市が活性化につながれば」と期待を込めました。


トキエアは5年前に設立された新しい地域航空会社で、去年から運航を開始し、現在は新潟と札幌、名古屋、神戸をつなぐ定期便を運航しています。
  
10月には、堀江貴文氏が取締役に就任。記者会見では堀江氏が福井空港に言及するこんな場面もー
   
トキエア・堀江貴文取締役:
「福井空港とかあるんですよ。かわいそうですよ、全然使われてなくて」
 
トキエア・和田直希共同代表:
「我々、テストで新潟から福井に飛んだんですよ」
  
トキエア・堀江貴文取締役:
「立派な空港ですよね。そういうところにぜひ就航してほしい」

◆空港の利用拡大を目指し県がオファー

なぜ今回、トキエアが福井空港への試験飛行を行ったのか。そこには県のアプローチがありました。
 
県は、福井空港の利用拡大を図るため、新たな取り組みとして福井空港で離着陸可能な航空機によるチャーター便の運航を検討しています。
  
その中で県が目をつけたのが、トキエアのATR42-600でした。この機体は現在、金曜から月曜までは定期便として運航していますが、火曜から木曜までの利用はなく、トキエアとしてもチャーターでの利用拡大を検討していました。
 
県はこの稼働していない日での、福井空港と新潟空港を結ぶチャーター便の運航を見据えてオファーしました。

もし、飛行機が新潟から福井に飛ぶとしたら、新潟県民は利用したいと思っているのか、聞いてみました。
 
新潟県民は―
 
「越前がにが有名なのは知っている。カニ大好きだから食べてみたい。車では行ったりするけど、電車だとどう行ったらいいんだろう…(Q.飛行機がつながったら?)それなら行きたい。カニを食べに。便が悪いから行かないだけ」
   
「孫が恐竜が好きなので1回行ってみたいとは思うが…意外と距離あるので、そこまで行くのなら大阪とか京都に行った方がいい。(Q.飛行機で行くなら?)行ってみたい、一度は」
  
福井-新潟間を電車で移動するには、北陸新幹線で上越妙高まで行き、特急に乗り換える必要があり、うまく乗り継いだとしても4時間ほどかかります。この交通の便の悪さが、新潟県民が福井に足が向かない要因の1つのようです。

◆人を乗せての試験飛行

10月30日、新潟空港に集まったのは、福井県や新潟県の職員、福井の県議会議員、そして福井空港のある坂井市の地元住民たちです。目的はATR42―600の搭乗体験。今回は、実際に人を乗せて福井空港に向かいます。
 
新潟県の幹部も「新潟県としても新潟空港の活性化、ネットワークの拡大による交流の拡大は重大なテーマ。まずは実証飛行ということで第一歩がスタートした。これが着実に進むことを期待している」と見送りました。


そして午前11時35分。
   
小川一樹記者:
「福井空港に向け、今トキエアの中型プロペラ機が離陸しました」
  
この機体は大型ジェット機よりも低い高度を飛行します。そのため、フライト中は眼下に日本列島がしっかりと見えています。その景色を楽しめるのも、中型プロペラ機ならではの魅力です。
    
搭乗客:
「佐渡島!ばっちりです。これだけ見えたのは初めて」
「羽の横なんですけど、静かですね。こじんまりしていてアットホームでいいと思います。乗りにくさも全くないです」
  
機長アナウンス:
「当機は、現在16000フィート、およそ4900メートル上空を飛行しています。左手には北アルプスの山々、遠くの方に富士山の山頂も見えております」
  
トキエアスタッフ:
「大型機と同様に安定した飛行を実施しています。稼働率は今後も上げていきたいと考えています」

◆5年程かけて福井空港の新たなビルの設計、建設へ

午後12時24分、福井空港に着陸。衝撃や揺れもあまり感じることなく、新潟から49分のフライトで到着しました。
  
今回、一緒に搭乗した新潟県の職員は「一つのルートがきれば、それを使って旅行会社と連携しながら取り組みできると思う。1時間くらいで飛行機で来れるというのは、お互いにとって魅力的なエリアになるのではないか」と手ごたえを感じている様子でした。
   
福井県の担当者も「(機体を)使っていない時間もあるので、その隙間に我々がお願いすると、比較的コストもかからずいけるのではないか。チャーター機を飛ばすことを目指して今回、体験搭乗できたことで、今後も飛躍できたら」と話していました。


県は、今後5年程度かけて、福井空港の新たなビルの設計、建設を行う予定です。チャーター便の就航を見据えると、新空港ビルには、保安検査スペースや待合室なども整備が必要となります。加えて、新潟―福井間のチャーター便にどれほどの需要があるのか、その見極めや掘り起こしが課題となります。
   
次の段階として県は、新潟県やトキエアと検討を重ねつつ、旅行会社を巻き込んで、旅行パックにチャーター便を使ってもらえるようにアプローチしたいとしています。

福井空港のように都道府県が管理する空港は全国に54あります。そのうちトキエアは今年8月に和歌山県の南紀白浜空港と新潟空港を行き来するチャーター便を運航し、新潟と和歌山を観光する旅行パックの移動手段として使われました。
 
福井県が目指すのは、この新潟と和歌山のケースです。
 
チャーター便は定期便と違ってルートを自由に設定でき、空港と空港との移動手段として使えるなど可能性も広がっています。
 
福井空港でも観光やビジネスの利用にチャーター便の就航が実現できるのか、今後の動向に注目です。

福井テレビ
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