2023年6月に島根県邑南町宇都井で起きたMさんのケースはその典型だ。Mさんは、自宅裏の畑で、竹藪の奥から突然現れたツキノワグマに襲われた。付近では「まず見かけることはない」とされていたが、たまたま餌を探しにMさんの畑に来ていところ遭遇し、驚いて自分の身を守るために攻撃してきたのだろう。Mさんは、右目を失明するほどの大ケガを負った。
こうした不意打ちの襲撃は都市部でも起きている。

2021年6月、札幌市東区の住宅街にヒグマが出没し、4人を次々に襲撃。全身140針を縫う重傷を負った安藤伸一郎さんは、札幌市営地下鉄東豊線・新道東駅に向かう途中、背後から体長160cm・体重158kgのヒグマから突然の一撃を受けた。

山地から離れた平地の東区になぜ現れたのか、そしてなぜ襲ったのか。その理由ははっきりしないが、クマは札幌市北部から餌を求めて石狩川沿いに南下してきた可能性が指摘されている。
「小さな子グマを連れている母クマは、子を守るための防御的な攻撃が増えるだろう」と山﨑教授が語るように、もっとも警戒すべきは「子連れのクマ」だ。
子育て中の動物の多くは、子どもを守るために攻撃性が高まる。クマも同様で、神経質になっている母クマは多い。過去のヒグマやツキノワグマによる人身被害の事例でも、子連れ母グマが関与しているケースがたびたび起きている。