熊本市は、大腸がんを減らそうと10月から、『無償』で全大腸内視鏡検査を実施するという全国初の取り組みを始めます。全大腸内視鏡検査は直腸から盲腸まで六つの部位全てを検査するものです。全額自己負担なら2万8000円ほどかかります。なぜ、この検査を熊本市が無償にしてまで取り組むのか、その背景を探りました。

【7月31日 熊本市と市医師会の共同発表】

【大西 一史 熊本市長】
「熊本市は全国で初めて、無償の全大腸内視鏡検査をします。目的は、大腸がんによる死亡者を一人でも多く減らし、市民の命を守ること」

大腸がんは国内のがん死亡数の順位で男性が2位、女性が1位。特に60代で急増しているということです。

【7月31日共同発表 熊本市医師会 園田 寛 会長】
「50代で全大腸内視鏡検査を1度受け、大腸ポリープを切除することで、その後10年間の大腸がん発生が半減する」

【7月31日共同発表 大西 一史 熊本市長】
「かかってひどくなってから、いろいろな治療をするのは医療費もかかるし、人生も厳しいものになる。50代で1回受けてもらうことで、相当効果が出ると判断した」

死亡者数の多さで知られる大腸がん、どんながんなのでしょうか。

年間約2000件の全大腸内視鏡検査を行っている、尾田胃腸内科・内科の尾田 恭 院長に聞きました。

【尾田胃腸内科・内科(熊本市医師会 大腸がん検診班委員長)尾田 恭 院長】
「大腸がんの多くは『腺腫性ポリープ』という大腸ポリープが5年から10年かけて
大きく成長して大腸がんになる。その間、例えば50代後半に全大腸内視鏡検査を
受けてもらい、早期がんの発見やがんになる前のポリープを切除することで、予防できる割合も高いがん」

それでは、全大腸内視鏡検査とはどんな検査なのでしょうか。

【尾田胃腸内科・内科(熊本市医師会 大腸がん検診班委員長)尾田 恭 院長】
「これで内視鏡を動かして左右に動かしてひっかけて先に進む。

(ライトとカメラが一緒についている? )

「そうですね。先端にカメラがついていて、光ファイバーで(モニターに)画像を出す」

全大腸内視鏡検査は、医師が肛門から内視鏡を挿入し、腸の中を観察するものです。

無症状のポリープや早期のがんを発見できたり、条件によっては、その場で切除して
治療することも可能なため、大腸がんの多くは早期の検査によって助かると言われています。

ただ、多くの人が気になっているのが・・・。

【尾谷】
「大変?苦しい?痛い?ということについて、今、熊本の検査はどうですか」

【尾田 恭 院長】
「熊本では鎮静剤を使って、検査が始まってから終わるまで眠った状態で終わる施設が多いので、検査の受容性はとてもいいと思う」

この全大腸内視鏡検査、40歳以上の人口比10万人当たりでみると、熊本県は月に535件と実施件数全国1位を誇ります。

であれば、死者数の少なさも1位かと思いきや、こちらは全国7位にとどまっています。

有益な検査が多く行われているのに、この結果は一体、なぜなのでしょうか。

【尾田胃腸内科・内科(熊本市医師会 大腸がん検診班委員長)尾田 恭 院長】
「これは推測に過ぎないが、大腸内視鏡を受けることで大腸がんを予防する効果は
とても高いが、実際定期的に受けている人が一定数いて、受けてない人もかなりいるのではないか」

熊本では、人間ドックや保険診療で定期的に何度もこの検査を受けている人が多い一方で、全く受けていない人も多いという現状が。

今回の取り組みの大きな目的は、これが背景にあるようです。

【尾田胃腸内科・内科(熊本市医師会 大腸がん検診班委員長)尾田 恭 院長】
(検査ができる医療機関の数は熊本市は?)
「今回の全大腸内視鏡検査実施に手を挙げた医療機関が75施設くらいあったと思う。非常にボリュームも大きい」

熊本市はこうした医療資源の強みを生かし、大腸がんの死者を減らそうと、全国初の無償検査実施を決めました。

【9月1日 大西 一史 熊本市長】
「健康で長生きすることによって、長い目で見て、医療費の負担も抑制につながっていく。皆さんに関心を持ってもらい『受けよう』という気になってもらう。期間限定で、人数も限定で『無料であればちょっとやってみようかな』と思うきっかけになる」

7月の発表以降、熊本市には多いときで、1日10件以上の問い合わせが来ているということです。

熊本市が無償で行う全大腸内視鏡検査。対象は今年度中に55歳から59歳を迎える市民のうち、50歳以降に全大腸内視鏡検査を受けていない人で、先着1000人です。

50代の7割が1度も受けていないとされる全大腸内視鏡検査、受け付けは9月24日スタートです。

熊本市は今回の検査を今後の健康政策に生かす方針です。

まずどのくらいの人にがんが見つかるのか、そして1000人の方々には追跡アンケートを行って体調を確認し検証していくということです。

申し込み方法は、9月24日に熊本市のホームページで検査を実施する医療機関、約70カ所が公表されます。検査希望者は、その中からご自身で医療機関を選び、その医療機関に電話で申し込みをしてください。10月1日以降に問診や検査の実施が始まる予定です。詳しくは熊本市のホームページをご覧ください。

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