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今回は多久高校の高校生クライマーを紹介します。力強い登りで8月のアジアユース選手権で世代別の3位に輝きました。
高さ約15m、最大傾斜は150°。
反り立つ壁をぐんぐんのぼっていくのは多久高校3年、通谷結太選手17歳。
指先まで神経を巡らせ、決められたコースを、ひとつひとつ着実に進みます。
【多久高校3年 通谷結太さん】
「絶対同じ課題が出ないんですよ。同じ課題が出ないからひとつひとつ、新しい出会いみたいな自分の弱いところだったり自分のうまくいったところだったりが出るのが結構好きです」
多久高校におととしオープンしたクライミング施設、「九州クライミングベースSAGA」。
速さを競う「スピード」高さを競う「リード」などボルダリングの3種の競技すべてを行うことができる九州唯一の施設です。
ここで通谷さんは週に6回、1日3、4時間ほどの練習に励んでいます。
得意競技は5mほどの壁に設定された「課題」と呼ばれるコースを制限時間内にいくつ登ることができたかを競う「ボルダー」です。
【多久高校3年 通谷結太さん】
「自分結構メンタル弱くてボルダーは何回落ちても大丈夫なんですけど、リードは1回落ちたらそこで試合終了だからボルダーは何回落ちてもいいっていう気の楽さがあるから」
そんな通谷さんの強みは指先や足先など、末端の神経の鋭さや強さを活かした登りです。
【多久高校3年 通谷結太さん】
「自分の得意なホールドというか持ち方がもう指先だけで持ってじわりじわり行く感じで」
通谷さんの指先を見せてもらうと、努力の結晶が。
【多久高校3年 通谷結太さん】
「こことかここらへんはもうカチカチで触ったら分かるんですけど分厚いです。こういうホールドだったりしたらこう持ってこういうことしてたら全然手の皮が削れるからあんまりこういうホールドは好きじゃない。だからこういうホールドは結構好き」
通谷さんがクライミングを始めたのは4歳から5歳のころ、家族でボルダリング施設に遊びに行ったのがきっかけ。
兄の律さんも現在茨城県でプロの選手として活躍しています。
通谷さんは小学校へ入学してから本格的に競技の世界へ。8月行われた中国貴陽でのアジアユース選手権ではU19ボルダー男子の部で3位に輝きました。
【多久高校3年 通谷結太さん】
「はじめての国際大会で変に緊張せずに自分なりの登りというか自分が思っていた以上の登りができたので結構よかったです。自分一人の、4分間その時間で会場みんなにどういうパフォーマンスを見せるかそういうのを考えたりしてました」
日曜日の朝。通谷さんの姿は県境を超えた長崎県の山中にありました。
多良岳県立公園の一角にある48の滝と淵が連なるこの渓谷は、龍頭泉の名で知られています。通谷さんが向き合うのは横たわる大きな岩。
クライマーの間で知られるスポットのひとつです。
好きな音楽を流し、攻略方法を考えながらじっくりと進めていく岩登り。通谷さんにとって、日々の練習から離れてリフレッシュするための息抜きです。
【多久高校3年 通谷結太さん】
「冬はもう毎週のようにやっててでも夏は暇があればやっているという感じ。結構岩は行きます。スポーツばっかりやってたら頭おかしくなりそうなんで」
過去に攻略された岩登りのルートは「課題」として残されていて、多くのクライマーが達成を目指します。通谷さんは左側から右上に向かって登る課題を春にクリアし、現在は、中心を登る課題に挑戦中です。
【多久高校3年 通谷結太さん】
「兄が作った課題(コース)でまだ兄しか登れてないんですよ。だから2番目に結太が登ろうと思って今頑張ってる」
ひとつ年上の兄、律さん。次男の結太さんにとって兄の存在がつらい時期もあったと父の明徳さんは話します。
【結太さんの父 通谷明徳さん】
「やっぱり律の方が成績が出ていて、ずっと。『次は通谷選手です』と紹介されたときにみんな見るけど、『弟くんか』みたいな。そういうのがあって、本人も登れない時期だったんで、結太はずっと比較され続けてきつかったと思います」
兄・律さんが7日間かけて完登したこの課題をクリアすることは、通谷さんにとって兄を超えるための一歩でもあります。この日は4日目の挑戦。
まだまだ攻略の途中です。
【多久高校3年 通谷結太さん】
「ずっと一手ができない、ってやつを何時間もやってます。でもなんか思ったより苦じゃないんですよ。結構みんなだったらすぐに、やめた、ってなるけど地道にやるの結構好きで。だから無心でやってます。無心でもう4時間とかそれくらい。」
中腹の張り出し部分まで手がかかるものの・・・落下。
【多久高校3年 通谷結太さん】
「手応えは、毎回行ってるんですけどありますね。今年、今年中ですね。今年の冬にもう完登したいです」
高校卒業後は同じ多久市内にある県立の学校に進学を決めている通谷さん。
理由はもちろんこの環境にあります。
【多久高校3年 通谷結太さん】
「すぐそこにあるんですよ産業技術学院っていう専門学校があってそこで2年間なんですけど勉強というか専門的知識を学びながら学校が終わったら多久高校で登って」
これからも競技を続けるという通谷さんの目標は…
【多久高校3年 通谷結太さん】
「シニアの代表になりたいので今後もクライミングしっかり続けて代表目指して頑張りたいと思います。スポーツクライミングももちろんやってるんですけど岩(ロッククライミング)もやってて岩で兄を越したいと思っています」