8年前、大阪府岸和田市で台風の影響で1人が死亡した土砂崩れ。
被害を受けた住人たちは、業者が積んだ盛り土が原因と訴え、賠償を求めていて、12日、ようやく和解が成立した。
〈原告〉泉州木材工芸・嶋田光宏さん:(また)崩れへんかなというのは心配ですね。晴れてても雨降ってても、毎日、一日一回みますね。
現場では、未だ被害の爪痕が残されている。

■土砂が崩れ女性1人死亡、大規模な浸水被害も
2017年10月、台風21号の影響で岸和田市大沢町では山から土砂がなだれ込み、巻き込まれた女性が死亡した。
脇を流れる川もせき止められたため、上流の地域が浸水。
泉州木材工芸・嶋田光宏さん:ここまで水が来ました。下からちょうど3メートル。
工場では、一度水に浸かった機械の不調が8年経った今も続いている。
斜面は、なぜ崩れたのか。

■大阪府と岸和田市は62回立ち入り検査実施も、違法性なく「お願い」するのみ
大阪府などによると、この場所は私有地で、もともと農地を造るために地元の建設業者が人工的に谷を埋め立てていた。
土の中に産業廃棄物が紛れ込んでいたこともあり、大阪府と岸和田市は62回にわたり、立ち入り検査を実施。
しかし、埋め立て自体に違法性はなく、担当者は土砂を崩落させないよう業者側に「お願い」するのみだった。

■2017年当時の市長が「人災の可能性」に触れるも、永野前市長に変わると…
そんな中、2017年、盛り土が崩れたのだ。
岸和田市・信貴芳則市長(2017年当時):私としては”人災”の可能性も否めない。人災の可能性がある土砂災害の原因を究明したい。
当時の岸和田市長は、調査や対策に乗り出すと話していたが…
市長が替わると、岸和田市の姿勢は一変した。
住民:次の新たな災害が起こらないために、崩れた原因調べるのは当たり前のことじゃないんですか?市長がどういう考えなのか、それを聞きたい。
岸和田市・永野耕平前市長:天災だと考えています。

■永野耕平前市長は「天災」と明言
9月、公共工事をめぐって官製談合の疑いなどで、大阪地検特捜部に逮捕された前市長の永野耕平容疑者は、住民への説明会で「天災」と明言。
盛り土を積んだ業者側は、関西テレビの取材に対し、「横の土地から流れてきた水が土砂崩れの原因で、自らも被害者だ」と主張した。

■住民たちが賠償求める裁判起こす
天災か人災か―。
住民2人と工場など4社は、2020年、裁判所に判断を委ねることにした。
砂防ダムを設置するなど崩落防止策を怠ったなどと主張し、地主や業者側にあわせて2億円の賠償を求めて裁判を起こしたのだ。

■解決金7000万円で和解成立も…
それから5年。
大阪地裁:地主と業者は原告らに連帯して総額7000万円ほどを支払うこと。
地主と業者側が解決金としてあわせて7000万円ほどを住民たちに支払うことで、12日、和解が成立した。
泉州木材工芸・嶋田光宏さん:裁判所は『人災』とは認めてくれてると思います。(地主と業者側は)天災とまだ思ってるん違うかな。

■住民は二次災害への不安が残る
一方、業者側の代理人弁護士は取材に対し、「解決できたこと自体はよかったと思っている」とコメントしている。
土砂崩れから8年。
ひとつの区切りを迎えたものの、二次災害への住民の不安はいまだ残されている。

■「業者側の責任は認められたのではないか」亀井弁護士解説
Q:損害賠償請求額2億円に対して7000万円で和解という、この額をどう捉えればよいでしょうか?
亀井正貴弁護士:2億円の損害賠償ではありますが、7000万という金額であれば、損害がある程度認められているので、業者側の責任を認めているということです。
特にこれは『工作物責任』といって、その土地を占有している(所有している)人の責任は免れるのは難しくて、不可抗力がない限り責任は認められるので、この件は「責任論」はクリアされている。
ただ「損害立証」が結構大変だったと思います。崩落しているものの中にどういった損害物があるのか、その損害物をどのように経済的に係数的に評価するのか、というのがかなり難しかったのだろうと思います。
事故から3年後、時効ぎりぎりに提訴していますから、それだけ準備をちゃんとやっているということです。
また、裁判に5年かかっていますから、おそらく崩落原因の立証と損害の立証で非常に手間がかかったのだと思います。
(関西テレビ「newsランナー」2025年9月12日放送)
