文化庁が認める全国各地で100年続く食文化「100年フード」に認定されている「秋田の佃煮」。そのつくだ煮文化が根付く秋田・潟上市昭和地区で営業を続ける老舗つくだ煮店が、地域を盛り上げようと新たにカフェをオープンさせた。つくだ煮を愛し、音楽も愛する店主は、コンサートなどを開きながら、訪れる人が常に“ウキウキ”や“安らぎ”を感じられる空間にしたいと未来を描いている。
“伝えていきたい文化”の発信地に

2025年5月に秋田・潟上市にオープンした「かふぇうたせ」。1897(明治30)年創業の老舗つくだ煮店「千田佐市商店」が手がけた古民家カフェだ。

店主の千田浩太さん(33)は、潟上市で生まれ育ち、小さい頃からピアノに打ち込んできた。2014年にフランス・パリに留学し、3年間クラシック音楽を学んで帰国。その後は家業のつくだ煮店の経営に携わる傍ら、自身の音楽経験を生かして『潟上国際音楽祭』を企画するなど音楽活動にも精力的に取り組んできた。

カフェを手がけた経緯について千田さんは「つくだ煮が若い人にあまり認知されていない。つくだ煮や八郎潟という伝えていきたい文化をいろんな人々に知ってもらうために、八郎潟の恵みを使った料理やおしゃれなデザートの食べ方などを提案できる場所づくりをしたいと思った」と話す。
1年以上かけ空き家をリノベーション
かふぇうたせは、雑貨店兼住宅だった築80年の空き家を1年以上かけてリノベーションした。

古民家ならではの味わいが感じられる土間や梁(はり)など、店内は懐かしさと新しさが融合した空間となっている。

「うたせ」という店名は、つくだ煮の材料となる魚を取る舟「うたせ舟」から名付けられた。
千田さんは「うたせ舟のように風を帆にうたせて、いろんな人の価値観や思いを受けて一緒につくっていけるようなカフェの空間にしたい」と語る。
看板メニューも“うたせ舟”イメージ
かつては滋賀県の琵琶湖に次いで全国2位の広さを誇った湖・八郎潟の恵みを生かして、潟上市昭和地区に根付いたつくだ煮文化。その地域独自の文化を発信し、これまでなかった地域住民の憩いの場にしたいとつくった「かふぇうたせ」。

店の看板メニュー『うたせワッフル』は、ワッフルでバニラアイスを包み、うたせ舟をイメージした人気の一皿だ。

もう一つのおすすめが、千田佐市商店の『いもチーズ』というサツマイモチップス風のつくだ煮を砕いて振りかけた和風の『いもチーズ黒蜜パフェ』。甘じょっぱさと生クリームがマッチして、食べ進めていくとコーヒーゼリーのほろ苦さとワッフルのサクサク食感も楽しめる一品だ。
“ウキウキ”や“安らぎ”感じられる場所に
徐々に来店客が増え、地域の多くの人に親しまれるようになってきた「かふぇうたせ」。

「実家に帰ってきたみたい」とか「祖母の家に帰ってきたみたい」と言ってくれる人も多いと言い、和気あいあいと話している姿を見ると「一つのコミュニティの場所づくりになっている実感がある」と話す千田さん。
居心地の良い空間づくりはもちろん、色々なコンサートやイベントを開きながら、地域の人がここに来たら常に“ウキウキ”や“安らぎ”が感じられるような空間づくりをずっと続けていきたいと、店の将来像を描いている。

伝えていきたい“つくだ煮文化”の発信の場として、地域の交流の場として、「かふぇうたせ」がこれからどんなにぎわいをつくっていくのか、期待が高まる。
(秋田テレビ)