長崎市の旧長崎英国領事館が11年の保存修理工事を経て新たに開館した。居留地時代の長崎の異国文化が残る貴重な建造物で、内部は当時のイギリスの雰囲気が漂い、見ごたえたっぷりだ。

11年の工事でよみがえる

旧長崎英国領事館は、長崎市大浦町の「大浦海岸通り」に面している。今は目の前に国道499号が走り、長崎水辺の森公園の先に長崎港が広がるが、当時は目と鼻の先に長崎港が見えたという。

 2026年1月にオープンした旧長崎英国領事館
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日本とイギリスの外交の拠点として、明治後期の1908年に建てられた洋館だ。旧長崎英国領事館の開館に合わせ、今回、アンティーク家具を揃えたり、室内に残る暖炉や壁などの飾りを補修したりして、居留地時代の雰囲気に生まれ変わった。

領事事務室(本館1階)
領事事務室(本館1階)

本館1階の「領事事務室」は、長崎に赴任してきた英国領事が仕事をしていた場所だ。作業机やタイプライターなどの展示で仕事場を再現している。

領事事務室(本館1階)
領事事務室(本館1階)

窓から見える長崎港や稲佐山を背に、長崎に暮らす英国人のサポートや通商に関する業務などをしていたのだろうか、と思いを馳せることができる。

当時と同じ色を再現した壁の色

領事事務室から正面の入り口につながる廊下を挟んだ南側には、応接室と食堂がある。

応接室(本館1階)
応接室(本館1階)

来客をもてなす際に使用されていた部屋で、装飾も豪華。深い緑色の壁は、約100年前の建築当時と同じ色に塗り替えられた。

食堂(本館1階)
食堂(本館1階)

応接室から続く「食堂」は来客のおもてなしにも使われていた部屋。深い赤い色の壁で応接室とは雰囲気ががらりと変わる。

アフタヌーンティーを紹介する展示
アフタヌーンティーを紹介する展示

アンティークのテーブルでは、19世紀の英国文化に触れてほしいとアフタヌーンティーでいただく紅茶やお菓子が紹介されている。

触れて楽しむ「隠しコンテンツ」

各部屋には様々な「隠しコンテンツ」が用意され、楽しみながら英国文化に親しむことができる。

紳士の「見て」マークを見つけたら、じっくり見て!
紳士の「見て」マークを見つけたら、じっくり見て!

食堂のテーブルに、紳士の「見て」マークを見つけた。

女王お気に入りの「ヴィクトリアサンドイッチ」(模型)
女王お気に入りの「ヴィクトリアサンドイッチ」(模型)

テーブルで目を引くのがガラスの器に盛られたお菓子(模型)。夫を亡くし、悲しみに暮れていたヴィクトリア女王を元気づけるために作られたケーキとの説明で、その名も「ヴィクトリアサンドイッチ」。英国伝統のティーケーキだそうだ。

自慢の口髭を濡らさずに紅茶を飲むには?
自慢の口髭を濡らさずに紅茶を飲むには?

もう一つ見つけたのが「開けて」のマーク。食堂のサイドボードにある「開けて」マークに従って、引き出しを開けてみると…口元に小さな仕切りがあるティーカップが出てきた。「ムスタッシュ(口ひげ)カップ」だ。口ひげを生やした英国紳士が口ひげを濡らさずに紅茶を飲むために作られた特殊なカップ。口ひげがトレンドだった時代に流行したという。

100年前の建築物を後世に残すため

領事館はレンガ造りの洋館建築に、日本の屋根瓦。和と洋の融合を垣間見ることができる建物で、当時の面影を伝える貴重な歴史的建造物だ。

レンガ造りと屋根瓦
レンガ造りと屋根瓦

領事館としては1941年まで使用され、その後児童科学館や美術館として使われたが、老朽化が進み2007年に閉鎖された。

工事中に公開された建物内部
工事中に公開された建物内部

老朽化した100年以上前の洋館を修理、保存する工事は大掛かりなもので、「建築当初の建物はどのようなものだったのか」と丁寧な調査をすることから始まった。

さびてボロボロの柵
さびてボロボロの柵

ベランダの柵などは100年の間に錆びて断面が薄くなり、場所によっては折れていた部分もあったという。

免震テクノロジーを使用

保存・修理のもう一つねらいが「免震化工事」だ。

建物の模型 建築当初は地中に杭が打たれていた
建物の模型 建築当初は地中に杭が打たれていた

海沿いの軟弱地盤に立つ建物には、建築当初も地中に松杭(まつくい)を打って対策が取られていた。

免震装置の仕組みが分かる模型
免震装置の仕組みが分かる模型

今回の工事で、地震の激しい揺れが建物に直接伝わりにくくするための装置を地下に置くなど、地震対策が強化された。

見えない地下に、建物を守る仕組みが…
見えない地下に、建物を守る仕組みが…

歴史ある建物を守るため、今の時代だからこそできる調査やテクノロジーを使っての、11年もの時間をかけた保存修理工事となった。

長崎市文化財課 学芸員 倉田法子さん
長崎市文化財課 学芸員 倉田法子さん

長崎市文化財課の学芸員 倉田法子さんは「修理の現場を見ると一つ一つ丁寧に調査、作業されていて、後世に伝えるための修理は大変なものだった。ここにつながってきた歴史を皆さんにも感じていただいて、次の100年に残していきたい」と話した。

「まるでイギリスにいるような感覚」

オープン初日、開館記念の式典が行われた。

オープン記念のテープカット
オープン記念のテープカット

記念式典には、長崎市の鈴木史朗市長や在大阪英国総領事館のマイケル・ブライス総領事など約100人が参列した。

「大先輩がここで働いていたかと思うと感慨深い」
「大先輩がここで働いていたかと思うと感慨深い」

ブライス総領事は領事事務室の椅子に座り「まるでイギリスにいるような感覚。私の大先輩方がここで働いていたと思うと、とても感慨深い」と、笑顔を見せた。

居留地時代の長崎を感じてみては
居留地時代の長崎を感じてみては

「観光の新たな魅力として活躍してくれるのでは」と、鈴木長崎市長も期待を寄せる。

工事のため移転していた野口彌太郎記念美術館も領事館2階に戻った。長崎の風景画を楽しみながら居留地時代の日本とイギリスの交流を存分に感じてみてはどうだろうか。

旧長崎英国領事館
🔳開館時間:午前9時~午後5時(最終入場:午後4時30分)
🔳休館日:毎週月曜日(祝日を除く) 年末年始(12/29~1/3)
🔳入館料:一般700円 小中高生350円
(長崎市野口彌太郎記念美術館との共通入館料)
🔳住所:長崎市大浦町1番37号
🔳電話:095-821-3205

(テレビ長崎)

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テレビ長崎
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