とくに中小規模の自治体では、これらを同時にこなす余力がなく、外部委託に頼らざるを得ない場面も増えています。
制度の厳格化は紙一重
財政面の課題も深刻です。点検には1メートル当たり数千円〜数万円の費用がかかることもあり、対象区間が拡大するほど、自治体の年間予算への圧迫が強まります。
点検結果が「Ⅰ=速やかな対応が必要」となった場合には、即時の補修工事が求められますが、実際には翌年度まで予算化できず、対応が後手に回る例も少なくありません。
制度が整えば安心とは限らないのです。むしろ制度の厳格化は、現場の負担増と紙一重です。
点検頻度が増えることで、インフラの安全性が高まるのは間違いありません。しかしそれは、膨大な作業負担と財源確保の責任を、各自治体が引き受け続けるということでもあります。もしこの負担を支えきれなければ、制度は形式的に整っていても、実質的には機能不全に陥る危険すらあります。
「点検したはずなのに、事故は起きた」
八潮の事故は、その象徴でした。制度はあっても、すべてを見通すことはできない。リスクは、制度の隙間をぬって静かに忍び寄ってきます。