2025年1月、埼玉県八潮市で道路が陥没し、走行中のトラックが巨大な穴に転落するという事故が起きた。その原因は、地下10メートルに埋設された下水道管の破損にあるとされる。
こうした出来事は特殊な災害ではないというのが、水ジャーナリストの橋本淳司さんだ。
法定耐用年数を超えた水道管は全国で20%を超えている。見えないけれど“静かなる崩壊”が進む上下水道の実態に迫る、著書『あなたの街の上下水道が危ない!』(扶桑社)から一部抜粋・再編集して紹介する。
気候変動と下水施設への影響
近年の気象の変化は、これまでのインフラ設計の前提を確実に揺るがしつつあります。
集中豪雨や台風の大型化が続く中、都市の下水道にも想定を超える水圧がかかる場面が増えています。

一度に大量の雨が降ると、管の内部は急激に水で満たされ、設計上の流量をはるかに上回る圧力がかかります。圧力の高まりによって継ぎ目から水が漏れたり、古くなった管の弱い部分が破損したりする可能性があります。
とくに、継ぎ目の構造が古いタイプの管では、圧力に耐えきれずにずれや破損が起こることがあります。気温の変化も無視できません。
真夏の猛暑日が増えると、地表温度が上昇し、それが地下10メートルほどまで伝わることがわかっています。それが下水道管に負荷をかけ、長年かけて劣化に繫がることもあります。
気候変動は設計思想も揺るがす
気象変動の影響は、局地的かつ断続的に表れます。特定の地域では異常な降雨が繰り返され、別の地域では極端な乾燥が続く。
こうした変化が、下水道のような長寿命を前提とするインフラにとっては、ときに設計思想そのものを揺さぶる存在になります。