蛇口をひねれば水が出る。水を飲んだり、トイレを流したり、お風呂に入ったり…私たちの生活に「水」は欠かせない。
その水が通っている水道管はいま、深刻な老朽化に直面している。そして破損した場合、断水や漏水に加え、土砂災害を起こすリスクもあるという。
水ジャーナリスト・橋本淳司さんの著書『あなたの街の上下水道が危ない!』(扶桑社)から一部抜粋・再編集して紹介する。
地域によってもばらつく耐震化
現在、日本の水道インフラは深刻な老朽化に直面しています。国土交通省が公表した「水道事業における耐震化の状況(令和4年度)」によれば、基幹管路(導水管、送水管、配水本管など)の耐震適合率は全国平均で42.3%にとどまっています。
地域によってばらつきがあり、神奈川県では73.6%、東京都66.8%、千葉県62.3%と比較的高水準ですが、高知県24.8%、秋田県26.4%など、低水準の地域も多く見られます。さらに、同じ都道府県内でも都市部と地方部とで耐震化の進み具合には差があります。

耐震化は、老朽管の更新と一体で行われることが多いため、小規模な自治体にとっては予算や人材の不足が大きな壁となっています。また、管路以外の設備も十分な耐震性能を備えているとは言えません。
たとえば、全国の浄水施設の耐震化率は約43.4%、配水池では約63.5%にとどまっており、大規模地震発生時に機能を維持できるかどうか、不安が残ります。
一方、水道管全体の老朽化も加速しています。国土交通省によれば、全国の水道管の総延長は約74万キロメートル。法定耐用年数である40年を超えた水道管の割合(老朽化率)は、2011年度末時点では8.5%でしたが、2021年度末には22.1%まで増加しました。