認知症の人とその家族を支える心のよりどころとして全国各地に設置されている「認知症カフェ」。誰でも気軽に利用でき、コミュニケーションの場となっているこのカフェを、秋田・大館市の高校生が学校内で定期的に開いている。中心となっているのは福祉の道を志す生徒たち。工夫を凝らした運営に取り組みながら認知症と向き合っている。

2カ月ごとに校内で「認知症カフェ」開催

大館市にある大館桂桜高校。

大館桂桜高校(秋田・大館市)
大館桂桜高校(秋田・大館市)
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校内のフリースペースに生活科学科福祉コースの3年生7人が集まった。この日開催される「認知症カフェ」の準備をするためだ。

「認知症カフェ」とは、認知症の人やその家族をはじめ、地域住民や介護・医療の専門職の人たちが気軽に集まり、悩みを相談したり交流を楽しんだりする場所で、「オレンジカフェ」とも呼ばれる。

認知症カフェの運営に参加する生活科学科福祉コースの3年生7人
認知症カフェの運営に参加する生活科学科福祉コースの3年生7人

大館桂桜高校では授業の一環で、福祉コースの生徒が「認知症サポーター」の認定を受ける。「認知症サポーター」は、認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人やその家族に対して、できる範囲で手助けをする応援者だ。

認知症サポーターとなった生徒たちが「何か自分たちにできることはないか」と模索した結果、2024年度から認知症カフェの運営を始めた。会場の設営からドリンクの提供、接客まで全て自分たちの手で行う。

コミュニケーションを大切に

開店を前に、店長を務める櫻庭海咲さんが「今回の認知症カフェの目標は、全員がしっかりとコミュニケーションを取ること」と声をかけた。

そして午前10時半、2カ月に一度の大館桂桜高校「オレンジカフェ」がオープン。開店と同時にお客さんが訪れた。

「認知症は特別なことではない」と話す店長を務める櫻庭海咲さん
「認知症は特別なことではない」と話す店長を務める櫻庭海咲さん

店長の櫻庭さんは「認知症は誰でもなり得ることで特別なことではない。なった上で今までの生活を同じように続けられるかを大切にしている」と話す。

訪れた人たちに笑顔で接する生徒たち。楽しく話す中でも細かい気配りは忘れない。

開催を楽しみにしている地域住民も多いという桂桜オレンジカフェ
開催を楽しみにしている地域住民も多いという桂桜オレンジカフェ

「お客さんと接するときは、まず楽しんでもらえるように心がけている」と話す櫻庭さん。「来てよかったな」「こういう場所があってよかったな」と思ってもらえるように頑張っているという。

特別ではなく“さりげない支援”を

桂桜オレンジカフェの目玉はレクリエーション。誰もが簡単にでき、季節にあったものを毎回行っていて、この日はオリジナルのうちわ作りを企画した。参加する全員が楽しめることを心がけている。

この日のレクリエーションは「うちわ作り」
この日のレクリエーションは「うちわ作り」

カフェには認知症の当事者の人も来てくれるが、特別にその人たちへの対応を変えるのではなく、みんなと同じように接することを心がけながら、支援をさりげなくすることが難しいという。

生徒たちは関わり方だけでなく、カフェとしてのクオリティーにもこだわる。

喫茶店の店主に教わりながらコーヒーの入れ方を練習する生徒たち
喫茶店の店主に教わりながらコーヒーの入れ方を練習する生徒たち

地元の喫茶店の店主を講師に招いてコーヒーの入れ方を学び、この日初めてお披露目した。

また、料理を学んでいる食物部の協力を得てチーズケーキやパウンドケーキを提供してもらい、豪華な特製のカフェセットが振る舞われた。

食物部の協力を得て提供したケーキセット
食物部の協力を得て提供したケーキセット

利用客は「自分たちの自宅ではなかなかできないので、非常に楽しんで何回も休まず参加している。これからも来たいと思っている」とカフェの開催を心待ちにしているようだ。

高校生の挑戦に福祉関係者も期待

別の認知症カフェを運営している大館市の職員も高校生の取り組みに期待を寄せている。

「もっとチャレンジしてほしい」と話す大館市福祉部長寿課の田中早霧さん
「もっとチャレンジしてほしい」と話す大館市福祉部長寿課の田中早霧さん

大館市福祉部長寿課の田中早霧さんは「高校生の10代の時に認知症に向き合って触れ合って考えることができるのは、すごく貴重な機会だと思う。高校生のチャレンジ精神を生かしてもっとチャレンジしてもらいたい」と話し、生徒たちの取り組みを後押ししていく考えだ。

店長の櫻庭さんは「福祉コースの生徒は、ほとんどが福祉系への進路を考えている。学生のうちから認知症の当事者や専門職の人と関わって学ぶ機会が多いので、関わり方や接し方を生かして、これからも活動していきたい」と意気込む。

利用客と笑顔で接する生徒(右)
利用客と笑顔で接する生徒(右)

笑顔あふれる大館桂桜高校オレンジカフェ。次回の開催は9月30日。レクリエーションはハンドマッサージを予定している。

福祉の道を志し、認知症と真正面から向き合う高校生たちの挑戦はこれからも続く。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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