カニをモチーフにしたロボットを自作し、その早さや動きの正確性を競う『越後本ズワイガニロボコン』。小学生から大人までが白熱したレースを繰り広げる中、初挑戦で優勝を狙う小学生コンビと前年の雪辱を果たすため、リベンジを誓う中学生を取材。相棒のカニロボットに込めたこだわりや、優勝にかける思いに迫った。
カニロボコン初挑戦の小学生コンビ
2025年12月16日、この日は新潟市東区で事前走行会が行われていた。
全国13カ所で行われているカニロボコンは、小学生部門と中学生以上が対象のオープン部門に分かれて試合を行い、全国大会への切符を争う。

プログラミングで動くカニロボの戦いの場となるのは、白と黒のラインが引かれたフィールド。この白と黒の境界線を光のセンサーで判断することで、ロボットをプログラミングで操作し、開けた宇宙エリアまで進んでいくルールだ。
初出場の小学5年生コンビ『ふみふみブラザーズ』は、田中隆史さんがプログラミングを、根元陽史さんがロボットの装飾を担当している。
陽史さんは「プログラミングで正しくないコードを入力するとエラーが起きたり、自分が思っていない動きになる」と話す。
だが、「そうした試行錯誤を行うことがプログラミングの醍醐味だ」と隆史さんは感じているようだ。
プログラミングで大切なのはトライ&エラー。2人は時間を計りながらロボットが曲がるタイミングを調整していた。
3Dプリンター活用し機体強化!優勝経験ある注目の中学生
一方で、カニロボに求められるのは、正確性だけではない。
デザインを重視しているという中学2年の松田海聖さん。
小学5年生の時にプログラミング教室でカニロボに出会い、1年後の6年生のときには新潟大会で優勝。その後、関西で行われた大会にも招待され、優勝した注目選手だ。
松田さんのカニロボの特徴は、なんといってもそのデザイン性の高さ。紙粘土などを駆使して、カニロボならではの装飾を施している。
4度目の挑戦となる今回は、6足歩行だった機体を8足歩行に改造するため、足を3Dプリンターで製作。

「下にローラーをつけたことで動きをなめらかにしたほか、そのままだと紙の上で滑るので、足にゴムをつけて滑らないようにした」などとこだわりを話していた。
自宅でこだわりの装飾を見せてもらうと、今回の装飾パーツが完成していた。

毎年、プログラミング教室にある3Dプリンターで印刷したパーツを、自宅で取り付けているという。
「今回は3Dプリンターでドット絵にしたカニを作った。カニは中学生らしく学生服を着ていて、名前は“ズワイガ兄さん”。原点に戻ってカニを多く使っている」と楽しそうにポイントを語る松田さん。
トライ&エラーで成長した松田さん 去年のリベンジ誓う!
また、失敗作の数々が松田さんのこだわりの強さを物語っていた。足は3回印刷し直していて、製作時間は12時間だという。

小学5年生の時から松田さんにプログラミングを教えている東條英明さんは「松田君は応用力がすごく利く子。新しいものに対して臆することがなく3Dプリンターを率先して使ってみたり、やりたい気持ちを形にできたのが、彼の成長スピードにつながった」と話す。
トライ&エラーが自然にできたことが、松田さんを大きく成長させたようだ。
そんな松田さんの今回のカニロボのテーマは“リベンジ”。24年、中学生になり、初めて出場したオープン部門で3位に終わったリベンジに燃えているという。
黒板に書かれた“優勝”の文字が、松田さんの覚悟を表している。
様々なカニロボ集結!“越後本ズワイガニロボコン”いよいよ開幕
迎えた本番当日。会場には、個性豊かなロボットが集まった。
100円ショップで買ったトングをカニの爪に見立てているカニロボに、親ガニに収納された子ガニが飛び出して、2体でレースを展開するカニロボまで。それぞれの創意工夫が光るカニロボがしのぎを削る。

越後本ズワイガニロボコンのルールは以下の通りだ。
スタート地点を出発したカニロボは白線の上を進み、3つの白い“レアメタル”の獲得を目指す。このレアメタルを獲得し、再びスタート地点へ戻る。
予選は獲得したレアメタルの数や、どこまで進めたかで得点が加算され、その合計得点で勝敗が決まる。
また、本戦になると得点がレアメタルの倍の“激レアメタル”が追加され、これが勝利のカギとなる。数はフィールドに3つで、早い者勝ち。
「上手く進むかは運頼み」予選に初出場・ふみふみブラザーズ登場
各選手、最終調整を済ませ、いよいよ予選が始まった。
ふみふみブラザーズの陽史さんは「プログラミングを組んで走らせるから、上手く進むかは運頼み」とカニロボに願いを託す。
そんな中でも順調にレアメタルを獲得し、無事ゴール。
予選を突破し、本戦1試合目では手強い相手に一時リードされるも見事勝利。ふみふみブラザーズは決勝へと駒を進めた。
プログラミングを担当した隆史さんは「やっぱり優勝して賞品のカニを食べたい。やってやろう」と闘志を燃やし、陽史さんも「ここまできたら優勝を狙いたい」と意気込む。
優勝狙うふみふみブラザーズ 決勝戦の結果は…
ふみふみブラザーズ、運命の決勝戦。順調な滑り出しで激レアメタルを一つ獲得。
五分五分の戦いを見せていたが、ここでアクシデントが…折り返し地点の宇宙エリアで落とすと得点になる赤いタマゴが、うまく落ちなかったのだ。

これによって得点を重ねることができず、結果は準優勝に。
対戦相手と熱い握手を交わすも、陽史さんは、悔しい気持ちを抑えきれず涙があふれていた。
レースを振り返り、隆史さんは「楽しかった。準優勝ならカニももらえるし、頑張ったかいがあった」と話す一方、陽史さんは「ちょっと悲しいけど、次はもっと早くなれるように、頑張ってカニロボを直す」とすでにリベンジに燃えていた。
本戦へ進んだ松田さん 準決勝の相手は去年の優勝者
小学生コンビが涙をのんでいた一方、オープン部門では松田さんの相棒・ズワイガ兄さんが圧倒的なスピードを見せつけていた。
レアメタルを全て獲得し、難なく予選を通過。
しかし、続く本戦の組み合わせが発表されると緊張感を漂わせる松田さん。なんと準決勝でライバルである去年の優勝者と戦うことになったのだ。
同じ中学2年生で、注目されている選手だった。
松田さんは本戦前、「前回もこの準決勝で当たって負けたので、リベンジを成功させたい」と力強く語った。8足歩行でスピードを強化したカニロボでリベンジを誓う。
リベンジの準決勝!レース中ズワイガ兄さんにエラーも…
レースが始めると、ズワイガ兄さんがスピードで圧倒。激レアメタルを3つ全て獲得し、あとはゴールするのみという場面で、危惧していたエラーが起きる。

急に回転しだし、コースを外れるズワイガ兄さん。しかし、落ち着いてリトライし、無事ゴールした。
リトライをすると獲得した激レアメタルが全て無効になるルール。合計得点でライバルを上回れば勝利となるが、結果は…。
実況:
勝者はズワイガ兄さんになります。
ずっと緊張した面持ちだった松田さんにようやく笑顔が見られた。
その後、決勝ではほぼ全てのレアメタル、激レアメタルを獲得し、安定した走りを見せたズワイガ兄さん。結果は相手が合計20点、ズワイガ兄さんが合計32点で見事、優勝はズワイガ兄さんに決まった。
松田さんは、24年の雪辱を果たして見事優勝し、2026年3月に福井県で行われる全国大会への進出を決めたのだ。
松田さんの夢は「新たな言語生み出せるようなプログラマーに」
決勝後、気持ちを一言で表すなら「最高」と答えた松田さん。
カニロボコンを通して「失敗してもずっと考え込むのではなく、すぐに挑戦することが大事だ」ということを学んだと振り返る。

松田さんの将来の夢は、プログラマー。インタビューの最後には「今やっているプログラミング言語の他にも多くの言語を勉強して、新たな言語を生み出せるようなプログラマーになりたい」と夢を語った。
失敗の先にある成功への道に気づいた3人。積み重ねたトライ&エラーは成長の跡として刻まれていく。
