秋田県有数の観光地「男鹿市」。伝統行事ナマハゲをはじめ、海や山の豊かな自然などが見どころだが、市の中心部でいま“酒を生かしたまちづくり”が進められている。新たな宿泊施設も開業するなど、まちに新風を吹き込んでいる。

男鹿の中心部に人を呼び込め

男鹿市の中心部、船川港地区に6月、『ホテルかぜまちみなと』が開業した。

男鹿市船川港に開業した『ホテルかぜまちみなと』
男鹿市船川港に開業した『ホテルかぜまちみなと』
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このホテルを手がけたのが、男鹿市内の空き家などを改装して食品加工所や飲食店などとして活用している「男鹿まち企画」代表の岡住修兵さん(37)だ。

ユネスコの無形文化遺産にも登録された「男鹿のナマハゲ」で知られ、四季折々の自然や伝統文化を楽しめる男鹿市は秋田県内有数の観光地だが、岡住さんが移住してきた4年前には少子高齢化の影響で市の中心部でも空き家や空き店舗が目立つようになっていた。

「男鹿の中心部を多くの人が行き交うようにしたい」と語る男鹿まち企画の岡住修兵さん(37)
「男鹿の中心部を多くの人が行き交うようにしたい」と語る男鹿まち企画の岡住修兵さん(37)

岡住さんは「立ち上げ当初、コロナ禍だったこともあったが、まちが閑散としていてすごく寂しかった。その当時から、このまちに人を歩かせられるような事業を立ち上げたいと思っていた」と話す。

醸造所・飲食店・ホテルなど続々稼働

秋田市の酒造会社で酒造りを学んできた岡住さんは2021年、JR男鹿駅の旧駅舎を改修して新ジャンルの酒“クラフトサケ”の醸造所「稲とアガベ」を設立した。

この醸造所を皮切りに、岡住さんは様々な施設をオープンさせていった。
酒かすを活用した調味料を作る加工所や市内に少なかったラーメン店。「二次会ができる場所を」という住民の声に応えたスナック。

さらには酒かすを使ったジンなどを造る蒸留所など、男鹿駅周辺の空き家や空き店舗を改修し、わずか3年半の間に8つの施設を稼働させた。

宿泊施設として男鹿駅近くに完成した『ホテルかぜまちみなと』は、その集大成ともいえる施設で、男鹿観光を楽しんだ客にゆっくりと体を休めてもらおうという狙いがある。

かつて港で働く人たちが寄宿舎として利用していた施設を改修し、新たに整えられた客室は14室。

海に沈む夕日をイメージしたカーテン
海に沈む夕日をイメージしたカーテン

カーテンは海に沈む夕日をイメージ。広い窓からは海を渡る潮風がたっぷりと入り、男鹿の海を感じることができる。

男鹿まち企画・岡住修兵代表:
僕たちの事業の中核は酒なので、僕たちの酒をこのまちで存分に楽しんでもらいたいし、飲んだら人間泊まりたくなると思うので、酒を飲んで、そのあと宿でゆっくりしてもらって、次の日は自然豊かで魅力的な男鹿半島を満喫してもらえるような滞在をしてもらいたい。

目玉は「サウナ」と「中華料理」

ホテルの目玉の一つが海の見えるサウナだ。

男鹿の海が望めるサウナ
男鹿の海が望めるサウナ

ヒノキの香り漂う空間では、海を目の前に眺めながらサウナストーンに水をかけて蒸気を発生させるロウリュも体験できる。

サウナでたっぷり汗を流した後は水風呂で体を冷やす。

水風呂の目の前に広がる海
水風呂の目の前に広がる海

目の前には海があり最高の見晴らし。開放感のある場所で“整う”経験は、他には変えられない。

たっぷりと汗を流して整った後は、ちょっと一杯いかがだろうか。
ホテルにある中華レストラン「マッチャイナ」では、“少し変わった町中華”をコンセプトに、中華料理や酒を楽しむことができる。

中華風酒かすマヨネーズを使った麻婆豆腐は、スパイシーさがガツンとくる一品。酒かすの甘い香りも感じられ、ビールはもちろん、日本酒にも合いそうだ。

文化の“柱”立ち上げ未来につなぐ

岡住さんたちを中心に進む男鹿の新しいにぎわいづくり。市のトップもまちの変化を感じているようだ。

「全面的に支援していく」と語る男鹿市の菅原広二市長
「全面的に支援していく」と語る男鹿市の菅原広二市長

男鹿市の菅原広二市長は「男鹿は変わった。多くの若者が来るようになったし、祭りなども今までと違って盛り上がっている。いろいろなことがなお一層変わっていくと思う。温かく見守るのではなく、全面的に支援していく」と力強く語る。

男鹿まち企画は、男鹿のまちを“酒のまち”にする「酒シティ構想」を掲げている。

「文化の柱になる事業を立ち上げたい」と意気込む岡住さん(右)
「文化の柱になる事業を立ち上げたい」と意気込む岡住さん(右)

岡住さんは「僕たちだけでなく、全国各地から酒を造りたい若者がこのまちに集まってきて、まだまだ空き物件はいっぱいあるので、そういった物件が一つ一つ醸造施設になっていって、5軒、10軒と集積して30年続けば文化になる」と語る。

そして、男鹿を本当の意味で未来に残すためには文化の“柱”が必要だと話し、「柱になるような事業を死ぬまでに立ち上げていきたい」と意欲満々だ。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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