西九州新幹線開業から3年が過ぎても九州新幹線長崎ルートの武雄温泉-新鳥栖間の整備方式・ルートは決まっていない。フル規格の費用負担、ルートめぐる見解の相違。課題山積の2026年に進展は見られるのか。
協議進展の兆しか…3者トップ会談
2022年9月に開業した西九州新幹線。フル規格で整備されたのは武雄温泉駅から長崎駅までの約66㎞。“日本一短い新幹線”が誕生した。

しかし、九州新幹線長崎ルートの武雄温泉-新鳥栖間については整備方式・ルートをめぐる佐賀県、国、長崎県、JR九州の協議は進まず、膠着状態の時期が続く。
こうした中、協議進展の兆しが見えたのが、2025年8月に行われた佐賀・長崎・JR九州のトップ会談だった。

長崎県の大石知事とJR九州の古宮社長が佐賀県庁を訪れ、九州新幹線長崎ルート「新鳥栖―武雄温泉」間の整備方式やルートについて、佐賀県の山口知事と約1時間にわたり非公開で意見を交わした。
その会談で、ある論点について意見の一致を見る。
費用負担の課題「国に訴えていく」
佐賀県は多額の費用負担と在来線の利便性低下などを理由にJR佐賀駅を通るフル規格に反対している。

3者トップ会談で意見が一致したのは、費用負担の課題などについて「国に訴えていく」ことだった。
佐賀県の山口知事は「長崎ルートはメリット、デメリットなども議論されたうえで、フリーゲージトレインで合意して進められてきた」ことを強調する。
そもそも九州新幹線長崎ルートはフル規格ではなくフリーゲージトレインを前提とした整備計画だった。

九州新幹線長崎ルート「新鳥栖-武雄温泉」間を、佐賀駅を通るフル規格で整備した場合、佐賀県の試算では負担額が1400億円以上になるとしていて、県の負担も課題のひとつとなっている。
佐賀県の山口知事は会談後、次のように述べた。
佐賀県 山口知事:
3者ともに国の責任で頓挫したといううちの特殊理由だから、それに対して国に対し追及していこうというところでは一致した。やみくもに進めても後で問題が発生することになるので、ここできっちりと3者で、もしフル規格で何かやるのであれば、しっかり合意をした上でやらなければいけないというふうに申し上げた

また長崎県の大石知事とJR九州の古宮社長もフル規格整備に伴う費用負担について次のように述べた。

長崎県 大石知事:
実際にどれくらいかかるのかといった試算を国に求めるべきではないかと提案した

JR九州 古宮洋二社長:
財源は大きな問題だとお互いに認識したので、これについては非常によかった。あとはこれをどうしていくか方法論のところで、まだ一致点が見出せていなかった、そこを今後話していこうと
国交省「法令の改正も含めて検討」
3者によるトップ会談後、国も動き出す。
2025年10月8日、国交省の水嶋事務次官が佐賀市を訪れ、山口知事と約1時間半にわたって非公開で面談した。
面談後、水嶋事務次官は、新鳥栖-武雄温泉間をフル規格で整備する場合の今後の議論について次のように述べた。
国土交通省 水嶋智事務次官:
佐賀の新幹線整備についての最大のネックが、もし佐賀県の負担分ということであるのならば、それを1つの課題としてテーブルの上に乗せてしっかりと議論していく必要があるんだろうと

そして10月23日、JR九州の古宮社長は国交省の水嶋事務次官を訪ね、佐賀県の費用負担の軽減などを要望した。これに対し、水嶋事務次官は「法令の改正」も含めて検討する考えを示した。
「ルート」めぐる見解の相違が壁に
九州新幹線長崎ルートをめぐる課題はフル規格整備に伴う費用負担の問題だけではない。
佐賀県とJR九州などではルートについて大きな意見の食い違いがあり、協議が進まない壁となっている。

佐賀県の山口知事が主張するのは、佐賀空港の周辺を通る“南回りルート”。
山口知事は「佐賀空港の活用や有明海沿岸道路などとの連携を含めて大きな視点による全く新たな発想での議論が必要。十分協議する価値があると思うし協議する準備は整えている」との見解を示している。

一方、JR九州の古宮社長は「佐賀駅を通るルートが佐賀県民、佐賀市民にとって一番利用しやすいルートになるのではないか」と主張している。

2025年10月、古宮社長は国交省の水嶋事務次官と面談したあと、報道陣に対し「佐賀駅を通るルートでの整備の実現に向けて方向づけしていただくよう国土交通省に向けて働きかけをさせていただいた」と従来の考えを述べた。

JR九州と同様、長崎県の大石知事も佐賀駅を通るフル規格での整備を求めている。
武雄温泉-新鳥栖間のルートについては見解の相違が壁となり協議が進まない状況が続いている。
特急減便で慎重姿勢を強める佐賀県
2025年12月、JR九州は2026年春のダイヤ改正で西九州新幹線の並行在来線を走る特急をさらに減便することを発表した。
佐賀県の山口知事は「当たり前のように多大な負担をして、在来線に犠牲を払ってでも新幹線が欲しいという前提がいかがなものか」と述べ、長崎ルートをめぐる協議については慎重に進める姿勢を改めて強調した。

並行在来線沿線の特急減便が、今後の協議に影響するのかどうかも気になるところだ。
一筋縄ではいかない協議の行方は…
フリーゲージという当初の前提が崩れ、論点が複雑化している九州新幹線長崎ルートの整備方式・ルートをめぐる協議は一筋縄ではいかない。

フル規格整備に伴う佐賀県の費用負担を軽減する「法改正」はどうなるのか。
ルートをめぐる見解の相違という壁を崩し着地点を見出すことができるのか。
並行在来線の特急減便で慎重姿勢を強めている佐賀県。国、長崎県、JR九州との今後の協議は前に進むのか。
課題が山積したまま迎えた2026年。
高市政権の新たな国交相のもとで、どのような政治判断がなされるのかも注目される。

“日本一短い新幹線”として誕生した西九州新幹線は2026年の9月に開業から4年目を迎える。
途切れたままのレールがつながる兆しは見えてくるのか…。
九州新幹線長崎ルートをめぐる協議の行方が注目される一年になりそうだ。
