食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。

植野さんが紹介するのは「しゃぶしゃぶ屋の豚丼」。

東京・木場にある昼は食堂、夜はしゃぶしゃぶ居酒屋を営む「木場くぼ」を訪れ、しゃぶしゃぶ用の豚肉を使った出汁のうまみが染み込む一品を紹介。

仲良し家族の温かさが詰まった家族4人で営む温かな雰囲気の店づくりにも迫る。

静かな住宅街にある食堂兼の居酒屋

かつて材木問屋が軒を連ねた江東区・木場。「平久川」や「仙台堀川」など物流に欠かせなかった運河が今も町を囲むように走っている。

区民の憩いの場「木場公園」では、毎年10月に開催される江東区民祭りでこの地域の民俗芸能「木場の角乗」が見られる。

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「木場くぼ」があるのは、東京メトロ東西線「木場駅」から徒歩8分の静かな住宅街。2019年の開店以来、食堂兼居酒屋として地元に愛される店だ。

長男でオーナーの大海さんに妻の萌さん、料理長をつとめる三男の陽介さん、店長として店を仕切り調理も担当しているのが母の妙子さんと、久保家4人の連携プレーが光っている。

昼は毎日豊洲で仕入れる鮮魚を使った日替わりランチに、「ハンバーグ」や「から揚げ」などの定食を提供。

夜はしゃぶしゃぶを看板メニューにした居酒屋に。3種類の肉をコク深いかつおダシで食べる、しゃぶしゃぶのほか、旬の食材を使った本日のおすすめなど酒がすすむ一品料理も豊富に取り揃えている。家庭的な味と空間が魅力的な、地元の人たちにすっかり根付いた店だ。

それならみんなでお店を開こう

店を開くきっかけは長男・大海さんの「全員、飲食をやっているからお店を開こう」という一言からだったと三男の陽介さんは言う。

左から)三男の陽介さんと母・妙子さん
左から)三男の陽介さんと母・妙子さん

発案者である大海さんは「父親が早くに亡くなって、息子3人が実家を出ると母親一人になって寂しい。実家を改装して店が出来たら家族の仲も良くなるし、ここで育っているので恩返しじゃないけど憩いの場所づくりとしてすごく良いかな」と思いを語った。

長男の大海さんは、以前大手レストランに勤務し経営のノウハウを勉強。妻の萌さんは調理師資格を持ち、和食や韓国料理、エスニック料理店などで働いた経験がある。

三男の陽介さんはお菓子作りが好きで金太郎飴工場で働いていたが、その後銀座のしゃぶしゃぶ店に勤務。母の妙子さんは栄養士の資格を持ち、長年料理教室の先生として活躍してきた。

これだけ飲食関係者がそろえば「どうにかなる!」と、自宅の1階を改装し店を開店したという。

そんな「木場くぼ」の魅力を常連から聞くと「地元密着が一番の所だと思う」「この辺で居酒屋は1軒もなかった。僕らみんなが望んでいた居酒屋が出来たので、週に3回とかずっと来ていた」「(妙子さんが)研究熱心。今日のおすすめとか違うモノを出してくれる」との声。

陽介さんに店の今後について聞くと、「細く長く続けたい」と答え、妙子さんは「2店舗目、3店舗目って展開があれば…」と語った。明るい妙子さんを中心に、仲良し家族が営む「木場くぼ」。地域の皆さんに、末長く愛される事を願うばかりだ。

本日のお目当て、木場くぼの「しゃぶしゃぶ屋の豚丼」。 

一口食べた植野さんは「味は強くないが白飯と合う、豚とご飯の甘みが一体化した美味しさ」と感動していた。 

木場くぼ「しゃぶしゃぶ屋の豚丼」のレシピを紹介する。