食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。

植野さんが紹介するのは「しば漬けと塩昆布のカルパッチョ」。東京・早稲田にある居酒屋「柳」を訪れ、しば漬けの爽やかな酸味と塩昆布の旨味が白身魚の繊細な味を引き立てる店主自慢の一品を紹介。

酒と肴、そして女将の笑顔に引き寄せられ、気づけば肩の力がほどけてしまう店づくりにも迫る。

割烹着姿の店主が一人で切り盛り

植野さんがやってきたのは新宿駅から乗り換えを含めて15分ほどの東西線早稲田駅。その早稲田駅から徒歩5分、早稲田大学大隈講堂のそばで2020年に開店したのが居酒屋「柳」。

カウンター6席にテーブル2つ、奥には掘りごたつの小上がりもある、なんとも落ち着く空間だ。

仕事帰りのサラリーマンやご近所さんが集まる憩いの酒場として毎日ワイワイと賑わっている。

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店をひとりで切り盛りするのが、割烹着姿がトレードマークの店主・柳澤菜穂さん。店名の「柳」は名字が由来。日替わりの食材で生まれる手作りならではの味わいと、いつ訪れても新しい味に出会える、それが店の魅力だ。

「無類の酒好き」を自認するだけあり、菜穂さんが取り揃えた日本酒や焼酎がずらりと並ぶ。おいしい酒と肴、そして菜穂さんの笑顔いっぱいのもてなしで、客も自然と笑顔になる。

「誰でもフレンドリーに話してくれるし、コミュニケーション能力がすごい」「みんな、仲良くなる。隣の人とでも」と常連客の声。常連でも一見でも、座ると肩の力がほどけていく、そんな居心地のいい店だ。

旬の食材を使う一期一会の料理

埼玉県桶川市出身の菜穂さんが、居酒屋の魅力にとりつかれたのは大学進学後のことだった。

「きっかけはアルバイト。お客さんの飲んだ後の“素”が出る感じが面白いと思って、居酒屋全体が好きになって。『これを職業にできたら、ずっと楽しい』と思ったんです」

卒業後は居酒屋チェーンを展開する企業に就職し、わずか2年で店長に就任。しかし自分で居酒屋を始めたいという思いは消えず、2020年9月に「柳」を開店した。 

常時30種類以上のメニューを用意している菜穂さん。その日しか食べられない一期一会の料理もある。

「メニューは、その時の旬のものをなるべく使いたい。メニューを考えるより先に、食材を買ってしまう。飲み歩きで得た知識を応用して、スマホに思い付いた料理を常にメモする。お客さんに週に何回でも手軽に来てもらいたいのでメニューをどんどん変える」

こうした菜穂さんの心配りの賜物が店には詰まっている。

常連客からも「(菜穂さんは)すごく気が利くし初見のお客さんにも、話を振ってくれたりして、自然と3人で話したり、居心地が良い」との声も。

菜穂さん自身も「店員として立っているというより“お客さんの一員”という気持ち」で立っているそう。菜穂さんが生み出す料理は、多くの人を虜にしている。

居酒屋を愛する店主が作った「居酒屋 柳」、ぜひ一度扉を開けてみては。

本日のお目当て、居酒屋 柳の「しば漬けと塩昆布のカルパッチョ」。 

一口食べた植野さんは「淡白な味の魚にコレが乗ると、躍動感のある美味しさになる」と絶賛する。 

居酒屋 柳「しば漬けと塩昆布のカルパッチョ」のレシピ、さらに店特製の「柳のポテトサラダ」のレシピも紹介する。