食の雑誌「dancyu」元編集長/発行人・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「カレー味酢玉ねぎと目玉焼きトースト」。
江東区大島にある製パン店「メイカセブン」を訪れ、食べ進めるほどに味わいが変化する、お店オリジナルの総菜パンを紹介。
店を常に進化させる3世代続く製パン店、家族経営の秘訣にも迫る。
大島の商店街沿いにあるパン屋
「メイカセブン」があるのは、東京江東区大島。
「大島は、江東区にありましてもともと川に囲まれて、水路の発展と共に江戸時代から栄えたという街です」と植野さん。
この記事の画像(11枚)都営新宿線が乗り入れ、新宿まで約25分程度と都心へのアクセスが良い大島。旧中川と隅田川それらを結ぶ、小名木川など河川に囲まれた街だ。
100年以上の歴史を誇る「サンロード中の橋商店街」は300メートルの通り沿いに約100店舗が軒を連ね、地域の台所のような存在だという。
総出で早朝から仕込み!なくてはならない店
大島駅から徒歩3分、下町情緒あふれる商店街に店を構える「メイカセブン」。
店内には菓子パン、総菜パン、サンドイッチなど出来立てのパンが並び、香ばしい香りが漂う。
店の奥のイートインスペースでモーニングやランチも提供しているため、地域の人たちの憩いの場になっている。
2代目・関口直喜さんに妻の明美さんと、3代目の息子夫婦も加わり、家族総出でパン作り。
仕込みは早朝6時半からはじまり、開店と同時に地元の人がお気に入りのパンを求めて来店する。
変わらぬ美味しさにほっこり元気になる、地元になくてはならない店だ。
製菓学校で出会い一緒にパン屋を
メイカセブンの初代は、2代目・直喜さんの父・喜永さん。
戦後、森下にある「カトレア」という製パン店でノウハウを学び、1958年に「メイカセブン」を開店。その2年後に、直喜さんが誕生した。
植野さんが「奥様はいつご結婚されたんですか?」と尋ねると、明美さんは「24歳の時に嫁いだんですけれども、実は私の実家もパン屋なんです。パン屋からパン屋に嫁ぎました」と明かす。
直喜さん25歳、明美さん22歳のときに、社会人が通うパン学校で2人は出会ったという。
直喜さんが「パン屋って朝早いから、休みの日も早く目が覚めちゃうんだよね」と何気なく話すと、明美さんが「え!実は私もそうなの…」と応じるなど、互いの実家が製パン店だったこともあり、すぐに意気投合したそうだ。
それから付き合いが始まり、2年後の1988年に結婚すると、明美さんもメイカセブンで働き始め、3人の子宝にもめぐまれた。
植野さんが「今後このお店はどうしていきたいですか?」と尋ねると、明美さんは「3代目も製菓学校で知り合って結婚したんです。ご縁があって、良いお嫁さんが来てくれて。2人で新しいものを作ってくれているので、地元で密着した昔ながらのパンもありつつ、新しいお客さんや新しいパンも作っていってほしい」と語った。
3代目夫婦に両親について聞いてみると、3代目の良寛さんは「新しいパンを作った時も“いいんじゃない”と言ってくれて、受け入れてくれるのが助かっている」と答え、3代目の妻も「新しいことに迷わずチャレンジする姿勢が尊敬します」と話した。
本日のお目当て、メイカセブンの「カレー味酢玉ねぎと目玉焼きトースト」。
一口食べた植野さんは「お酢とカレー粉が利いてて軽やかなふわっとしたおいしさ」と絶賛した。
メイカセブン「カレー味酢玉ねぎと目玉焼きトースト」のレシピを紹介する。