落ち着く気配のない列島各地のクマ出没。被害はもはや災害級となっており、政府も初の関係閣僚会議を開いた。こうした中、AIで作成されたクマの「フェイク動画」が物議を醸している。
クマ被害で初の関係閣僚会議
全国で相次ぐクマによる被害を受け、政府は30日、初の関係閣僚会議を開いた。

落ち着く気配のない列島各地のクマ出没。
30日朝も秋田・由利本荘市内を走行中の車が突然、道路を横切る親子らしきクマの群れの姿をカメラが捉えた。
間一髪で衝突は逃れたという。
岩手・雫石町では、30日朝の公民館の建物に向かって黒い影が徐々に接近していった。
そして入り口に1回、2回と突進。
その瞬間、ガラスが大きく揺れる様子が分かる。
2度跳ね返されたクマは、きびすを返し逃走していった。

当時、建物は開館前で誰もおらず、ガラスこそ割れなかったものの、突進の衝撃で自動ドアのフレーム部分が破損した。

第一発見者は「この鍵が開ける前に異常があったので、ツメの跡もあるし汚れもあるし血もあったから、これは完璧にクマだなと。どこにでも出るんだなと」と話した。

30日については、現時点で人的な被害は確認されていないが、2025年度のクマ被害による全国の死者数は12人と、すでに過去最悪の状態だ。

こうした中、クマ対策の関係閣僚会議が、首相官邸で初めて開かれた。
木原官房長官:
国民の命と暮らしを守るため、追加的緊急的なクマ対策を強化いたします。
木原官房長官を議長に、環境省や農水省など8省庁の大臣らが集まった。

秋田県から自衛隊の派遣要請を受けた小泉防衛相は、会議で「今般の事態の特異性も鑑み、与えられた能力と権限をいかし、安心安全を取り戻すべく対処してまいりたい」と述べた。

この閣僚会議などを通じ、政府側は11月中旬までに、クマ被害対策の政策パッケージを取りまとめたいとしている。
イギリス政府が日本に向かう旅行客らに注意喚起
その日本でのクマの脅威は、すでに海外にも広く知られ始めている。

イギリス政府は、日本に向かう旅行客らに対し「クマの目撃情報や被害は日本の山間部や森林エリアだけでなく、人口密集地域の周辺でも確認されています」とホームページで発信した。
AIフェイク動画が拡散
こうした中、クマについての誤った情報も今、ネット上に拡散されている。
SNSに投稿された動画には、学校の制服らしき服を着た人物が子グマを胸に抱えている。

本当であれば危険極まりないシーンだが、AIで作成されたフェイク動画とみられる。
別の動画では、畑でクマに餌付けをしているかのような様子もあった。

よく見ると、AIの生成ソフトとみられるロゴが表示されている。
他の動画にも同様のロゴが表示されていて、AIで生成されたものであることが分かる。

しかし、こうしたフェイク動画を信じているかのような「え?これ事実???凄い!」というコメントも散見された。

クマの生態に詳しい東京農業大学森林総合科学科の山﨑晃司教授は「見ている人にものすごく誤解を与えるというのが一番の懸念。野生動物にエサをあげるのは絶対にやってはいけないこと。(クマが)人慣れしてきているのは事実。助長するようなことは絶対にしてはいけない」と警告した。
(「イット!」 10月30日放送より)
