食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「汁なし担々麺」。
川崎にある中国料理店「松の樹」を訪れ、混ぜるほどに旨味が深まる店自慢の一品を紹介。本場中国で味を研究し、先代の思いを受け継ぐ2代目店主の思いにも迫る。
川崎で辛旨の本格四川料理!
植野さんがやってきたのは川崎駅。駅前には巨大ショッピングセンターのラゾーナ川崎、路地に入れば昭和の香りが残る「仲見世通り商店街」があり、新しさと懐かしさが交差する街だ。

本格四川料理を手頃な値段で食べることができる中国料理店「松の樹」は、1階と地下1階、2フロアからなる店で、テーブル席が充実している。

厨房で腕を振るうのが、2代目店主の宮本竜太さん。年に数回は必ず中国を訪れ、現地の味の研究を行っているという。「川崎で辛旨の中華を味わうならここ!」とも言われる四川料理の名店だ。
“料理の鉄人”の陳健一に憧れて
四川料理を作り始めたきっかけを宮本さんは、テレビ番組だったと語る。
「『料理の鉄人』という番組を見て、陳健一さんがかっこ良くて、決めた。迷いはありませんでした」

その後、調理師学校を卒業した宮本さんは、川崎の中国料理店に就職。その店で、「松の樹」の初代・矢野茂さんと出会う。宮本さんが修業を始めて4年ほど経った頃、矢野さんの店の開店に合わせてついて行く事を決意。そこで宮本さんは必死に矢野さんの料理を学んだという。
しかし、矢野さんは2022年に他界。矢野さんの思いを受け継ぎ、宮本さんは2代目になった。
「やっと先代のカラーも残しながら、自分のカラーも出していけるようになってきて、お客さんに『美味しいよ』と言われるようになってきた。今はそれが楽しみ」
植野さんに「今もし先代がご健在だったら、何と言うと思いますか?」と聞かれると、間髪入れずに「喜んでくれていると思います」と答えた。四川料理の道を追求し、宮本さんは今日も厨房に立つ。

本日のお目当ては、松の樹の「汁なし坦々麺」。
一口食べた植野さんは「辛さと酸味とバランスが良い、すーっと全体的に美味しさが広がる」と感動していた。
松の樹「汁なし坦々麺」のレシピを紹介する。