防災システム研究所の山村武彦所長と、記録的大雨の爪痕が残る熊本県内各地を回り、その教訓について考える。中小河川の境川が氾濫した玉名市で、浸水被害に遭った住宅などを取材した。

氾濫で一面湖のようになった境川周辺

防災システム研究所の山村武彦所長は「それほど大きくない中小河川が今、大きな河川よりも、越水したり氾濫したりするケースが多い」と話す。

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玉名市の北西部を流れる二級河川の境川。両岸には道路が走っているが、8月11日午前0時前の映像では、一面、湖のようになり、ガードレールが辛うじて見えるだけだ。

玉名市では、8月10日の深夜から11日の未明にかけて猛烈な雨が降り、3時間降水量が観測史上最も多い284.0ミリを観測。この記録的な大雨により境川が氾濫し、流域の住宅や店舗の多くが水に漬かった。

自宅が浸水した住民は「やっぱり怖かった、本当。初めて、床上の80センチまで浸水した」と話し、別の住民も「(降り始めて)30分ぐらいで床下の収納から水があふれてきた」と話す。

内水氾濫と外水氾濫が同時発生か

山村武彦所長は、この境川流域では「『内水氾濫』と『外水氾濫』が同時に発生した」と分析する。

山村所長は「河川の水位が上がっていると(市街地に降った雨が)排水できない状態になる。市街地に降った雨は市街地にたまっていて、なおかつ中小河川から水があふれて住宅街に流れ込むので、一気に住宅街が浸水してしまう」と話す。

自宅が浸水被害に見舞われた村田恭子さん(83)は「もうすごかった。雨の音からすごかった。あと降る雨の量が…」と当時を振り返る。8月10日の深夜、家族4人で暮らす村田さんの自宅はアッという間に浸水。2階に垂直避難したという。

自宅が床上浸水したほか、農作業用の小屋と車3台も水に漬かった。厳しい暑さの中、連日、泥水で汚れた家財道具などの片付け作業に追われているという。

村田さんは「(水は)恐ろしいですよ。私たちも水害に遭った人たちの気持ちが分かる。泣きたい…。ぼちぼちやります」と話すと、山村所長は「無理しないで、体に気をつけてください」と声をかけた。

過去の経験が通用しない記録的大雨

玉名市を流れる境川の流域では、過去に何度も水害に見舞われている。村田さんもこうした経験から宅地をかさ上げしていていたが、今回、浸水被害に遭ったという。

山村武彦所長は「雨の降り方が以前とは異なり、短時間にものすごい量の雨が降り、河川が氾濫したり、住宅街が浸水したりするケースが増えている。こうした状況を踏まえた家屋の浸水対策などが求められている」と話す。

(テレビ熊本)

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