機械の納入に当たって、機械の使用法やマニュアルの説明、価格の交渉、納入日時の打ち合わせなどはあったが、メンテナンスの打ち合わせやその費用についての説明などなかった。
業者の人が機械の点検に来たというので見てもらったが、とくに問題はなかった。その後も時々業者がやってきて、機械の点検をしていた。
後日、月々保守メンテナンス料というのが請求されていることに気づいた。そのような説明は何もなかったので、「話が違うじゃないか。そんな予算は計上していない」とこちらの言い分を伝えた。
それに対して先方は、事前の説明の際にメンテナンスについての説明をしたはずだし、安心して使ってもらうためにどの会社でもそのようにしていると主張し、話は平行線だった。

この場合、契約書に細かな項目まで記されていないという不備もあり、どこにも客観的証拠はなく、それぞれの記憶しかないので、説明しないのに説明したつもりになっているのか、説明を受けたのに説明されていないと思い込んでいるのか、真偽は不明である。
もしほんとうにメンテナンスについての事前説明が抜けていたとしたら、業者にとっては当たり前のことなので、たまたま言い忘れてしまった上に、言ったつもりになってしまったのだろう。
他の顧客相手に何度も説明していることゆえに、別の機会の記憶が混ざってしまったということもあるかもしれない。
先入観は目の前の現実を歪める
当然と思っていること、いわば常識や一般的知識が記憶に混入することを端的に示したおもしろい実験がある。