生成AIからアイデアや仕事のヒントをもらう人もいるだろう。一方で、生成AIに何を質問したらいいのか迷う人もいる。

これからの時代は対ヒトでも対AIでも「対話力」が問われる。

こうした考えを示すのが、累計100万部超の「トリセツ」シリーズを手がける、黒川伊保子さん。著書『対話のトリセツ』(講談社+α新書)から、コミュニケーションにおける表情の大切さとうなずかない若者、について一部抜粋・再編集して紹介する。

目の前の人の表情につられる

ヒトは、目の前の人の表情に、反射的につられる生き物だ。目の前の人が満面の笑みを浮かべたら、つられて笑顔になる(笑顔にまでならなくても、口角ぐらいは上がる)。

目の前の人が悲しそうな顔をしたら、こちらも口角が下がって神妙な顔になる。これは、ミラーニューロン(鏡の脳細胞)のしわざ。ミラーニューロンは、目の前の人の表情や所作を、鏡に映すように、神経系に写し取ってしまうのである。

そして、目の前の表情につられたとき、脳には、その表情に見合った情動が誘発される。表情と情動の神経信号は、強く連動しているからだ。

ミラーニューロンは赤ちゃんのときに一番機能する(画像:イメージ)
ミラーニューロンは赤ちゃんのときに一番機能する(画像:イメージ)
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ミラーニューロンは赤ちゃんのときに一生で一番強く機能している。赤ちゃんは、抱いている母親が笑いかければけらけらと笑い、母親が悲しい顔をすると、ときには泣き出す。表情が移って、気持ちがあふれてくるのである。

大人はそこまでじゃないけれど、やはり同様の機能を有している。

表情で、勝負が決まる

ということは、「前向きで嬉し気な表情」をもらった人は、「前向きで嬉し気な気持ち」が誘発されるということにほかならない。不満顔をもらった人は不満が、不安顔をもらった人は不安が誘発される。表情は、ことばを交わす前の気持ちを作り出しているのである。