冷蔵庫を開けて、目的のものを手に取れるか、それともたまたま目に入った賞味期限切れの食べ物が気になって手に取るか…。
これらの行動も「タテ型」「ヨコ型」と2種類ある脳の回路がどちらを優先しているかによって、違いが現れる。主にタテ型は「遠くの一点に集中する」、ヨコ型回路は「近くを満遍なく感じ取る」傾向にあり、通常どちらかを選んだらその1種類しか見えなくなるという。
夫婦や上司部下、友人たちで対話のすれ違いが起きてしまうことも、この脳の回路によるものだそうだ。
累計100万部超の「トリセツ」シリーズを手がける、黒川伊保子さんの著書『対話のトリセツ』(講談社+α新書)から、一部抜粋・再編集して紹介する。
タテ型優先の人が冷蔵庫を開けると…
タテ型回路は、「空間全体を眺めて、すばやく特異点をキャッチアップし、それを目標点に定めて瞬時に照準を合わせ、行動を起こす」という役割を果たしている。まさに、優秀なスナイパー(射手)の行動そのもの。
ちなみに、タテ型優先の人は、冷蔵庫の扉を開けたときも、とっさにこの演算を行う。すばやく特異点《危険なもの、そこにあってはならないもの》をキャッチアップして、そこに意識を集中してしまうのである。

このため「辛子のチューブを取りに行ったのに、賞味期限切れの納豆に意識をからめとられてしまう」なんてことが多発するわけ。
狩人たちの脳の優先順位は、当然、獲物(辛子のチューブ)よりも危険なもの(賞味期限切れ)が上。獲物と敵が同時に現れたら、獲物に気を取られている場合じゃないもの。
加えて、タテ型回路は数字にも鋭敏である。距離感やスピード感をつかんだり、数や量を直感的に把握したり、面の数や角度を認知してものの構造を把握したりする回路だから、数字という概念と親和性が高いのだ。
夫の行動は嫌がらせでもない
20世紀の上司はよく「数字で証明できる?」というセリフで、ヨコ型女子の部下の直感力からくるなかなかいい発想を蹴飛ばしていたけれど、あれも嫌がらせなんかじゃなく、せっかくの意見だから腹に落としたい一心だったのかも。