日本人の3人に1人が発症すると言われている帯状疱疹。治った後も、後遺症が残る可能性があり注意が必要だ。2025年4月から、高齢者を対象にワクチンの一部公費負担での接種ができるようになった。気を付けるべきポイントなどを医師に聞いた。
発症は50代から増え70代が最多
帯状疱疹について聞いたのは、福井県済生会病院皮膚科の長谷川義典医師。「発疹と痛みが出る病気で、痛みの方が先に出て、後から発疹が出てくることが多い」と説明する。
年代別の患者数は、50代から増え始め70代が最も多くなっている。
原因となるのは、子供に発症が多い水ぼうそうのウイルス。長谷川医師によると「水ぼうそうが治った後もウイルスが神経の細胞に潜伏するといわれていて、その神経に沿ってウイルスが増殖し、痛みと発疹を引き起こす」という。

目や耳に後遺症がある場合も
水ぼうそうを発症したことのない人も注意が必要だ。子供の頃に水ぼうそうワクチンを接種した場合、感染しても発症しないことがある。しかし、免疫力が低下している時や高齢になると、突如、帯状疱疹を発症する恐れがあるのだ。

薬や点滴を使って治療し、多くの場合、発疹は3週間から1カ月程度で治る。その後、神経の痛みは3カ月以内に治まることが多いが、発症した部分に神経痛が残る後遺症「帯状疱疹後神経痛」に苦しむ場合もいる。「差し込むような痛み、ずきずきするような痛み、しびれを伴うこともある」(長谷川医師)
顔面に症状が出た場合は、ウイルスが目や耳に通じる神経に感染している可能性があり、角膜ヘルペスや難聴、まぶたや口の動きをコントロールできなくなる顔面神経麻痺が起こる場合もある。

65歳以上はワクチンが定期接種の対象に
長期にわたって患者を苦しめることもある帯状疱疹。2025年4月には、65歳の高齢者を対象に帯状疱疹ワクチンの予防接種が定期接種の対象になり、一部公費負担で接種できるようになった。
弱毒化したウイルスを使った「生ワクチン」と、ウイルスの表面にある抗原に免疫を増強させる物質を混ぜて作られた「組換えワクチン」の2種類がある。
接種回数は生ワクチンが1回、組換えワクチンが2回。多くの自治体では接種費用を半額負担していて、自己負担費用は、生ワクチンで約4000円、組換えワクチンだと約2万円となる。

早めの受診が回復のカギを握る
長谷川医師によると、接種してから5年の時点で、生ワクチンの場合は40~50%、組換えワクチンの場合は90%以上発症のリスクを抑えられる。ただ、副作用には注意が必要だという。
「(生ワクチンと組換えワクチン)双方に言えることだが、注射した部位に腫れや痛みが出ることがある。組換えワクチンは免疫増強作用がより強いため、腫れ方や痛みがより強いことが多いと言われている。さらに、発熱や頭痛、倦怠感もより出やすい」
また、疾患により免疫力が下がっているみられる人は生ワクチンの接種ができない。

早めの受診が早期回復の鍵となるため長谷川医師は「痛みのある発疹に気付いたら、早めに皮膚科を受診してほしい」とする。