トランプ政権の真意

そして、トランプは、欧州のNATO加盟国に、防衛費をGDP比5%にするよう要求しています。彼の言動からはっきり分かるのは、「トランプは、ウクライナや欧州を守る気が全然ない」ということです。

トランプ政権は、日本に、防衛費をGDP比3%まで引き上げることを要請しています。つまり、防衛費を約18兆円にしろと。2025年度の防衛予算が8兆5000億円ですから、あと9兆5000億円増やさなければなりません。そして、トランプは欧州の軍事同盟国を守る気がないのに、「日本を守る気はあるのだろうか?」と考えてしまいます。

実際トランプは、「私たち(アメリカ)は、彼ら(日本)を守るが、彼ら(日本)は、私たち(アメリカ)を守る必要はない」と発言。日米安保の不公正性を指摘し、繰り返し不満を表明しています。

「他国を守りたくない」というのは、「アメリカファースト」「お金ファースト」のビジネスマン・トランプの「本質的価値観」だと思います。

これまでの大統領は、「同盟国の存在は力だ」と考えていた。しかし、トランプは、「同盟国は、アメリカからお金を奪っていく存在だ」と考えている。ですから、トランプ・アメリカが、他国の防衛に関与しない方向なのは、今後も変わらないでしょう。

しかし、そこで日本は、「では独裁ランドパワー同盟の方へ」となるべきではありません。そうではなく、アメリカの関与減を、「日本は、自分の国を自分で守れる体制をつくるチャンスを与えられたのだ」「軍事の自立を達成するいい機会だ」と肯定的にとらえるべきなのです。

『新版 日本の地政学』(育鵬社)

北野幸伯
国際関係アナリスト。著書に『プーチン最後の聖戦』、『日本人の知らない「クレムリンメソッド」世界を動かす11の原理』(ともに集英社インターナショナル)、『中国に勝つ 日本の大戦略』、『日本の地政学』(ともに育鵬社)等。

北野幸伯
北野幸伯

国際関係アナリスト。1970年生まれ。ロシアの外交官とFSB(元KGB)を養成するロシア外務省付属モスクワ国際関係大学卒業(日本人初)。ロシア・カルムイキヤ自治共和国大統領顧問、モスクワ滞在28年を経て帰国。99年メールマガジン「RPE(ロシア政治経済ジャーナル)」を発刊。現在、購読者59,669人。著書に『プーチン最後の聖戦』、『日本人の知らない「クレムリンメソッド」世界を動かす11の原理』(ともに集英社インターナショナル)、『中国に勝つ 日本の大戦略』、『日本の地政学』(ともに育鵬社)等。