年末年始の帰省や旅行シーズンを目前に控え、福岡県内でインフルエンザの感染が拡大している。全国的には減少傾向にある中で福岡県では警報レベルが続き、医療現場からは警戒の声が上がる。家庭ですぐに取り組める対策を医師に聞いた。
医療現場で危機感「今がピーク」
「ここ2週間ほどで爆発的に増えている。今がまさに流行のピークだろう」と現状を分析するのは福岡県那珂川市の「じんのうち耳鼻咽喉科」の陣内進也院長。それを裏付けるようにこのクリニックには連日、午前中から多くの患者が詰めかけている。
子供たちの間で流行拡大か
データもその深刻さを裏付けている。
県によると12月14日までの1週間の1医療機関あたりの感染者数は75.39人と前週の1.15倍に増え、依然として流行が拡大していることを示している。
全国的には感染者数が前週を下回る動きを見せる中で福岡県では増加していて、4週連続で「インフルエンザ警報」が発表される事態となっている。
特に深刻なのが教育現場への影響だ。福岡市内の小中学校などでは学級・学年閉鎖が相次ぎ、12月17日時点での累計件数は445件に達した。これは前年の約3倍に上り、子供たちの間で感染が広がっている実態が浮き彫りとなっている。
まずは「湿度を保って」
人の移動が活発化する年末年始、感染を防ぐにはどうすればよいのか。陣内医師は自宅でできる有効な対策として、湿度を上げることが重要だという。
「加湿器の使用や、室内に洗濯物を干すなどして湿度が高まると、インフルエンザウイルスは生存しにくい環境になる」(陣内医師)。
ある研究データによると、ウイルスの生存率は気温と湿度の組み合わせで変化する。
例えば、気温7~8℃で湿度23~25%という乾燥した寒い環境では、6時間後のウイルス生存率は63%と高いが、気温を変えずに湿度を51%に上げるだけで生存率は42%にまで低下する。
さらに温度を上げ気温20.5~24℃と暖かく湿った環境では、ウイルスの生存率はわずか4.2%にまで大幅に低下する。
つまり、部屋を暖めつつ加湿器などで湿度を保つことでウイルスの働きを抑える効果が期待できるという。
物理的に洗い流す「鼻うがい」も有効
陣内医師が「もう一つの有効策」として推奨するのが「鼻うがい」だ。「インフルエンザウイルスは、鼻と喉からしか体内に侵入しない。鼻の奥とのどを一緒に洗い流すことで感染しにくい状態を保つことができ、予防策として非常に有効」(陣内医師)。
とはいえ、鼻うがいは「痛そう」「難しそう」と敬遠する人も少なくない。そこで陣内医師に正しい手順とコツを聞いた。
まずは頭を少し前に倒し、片方の鼻から洗浄液を吸い上げる。そして反対側の鼻から液を出すが、この時、「あ~」と声を出しながら行うとよい。声を出すことで喉に液が垂れにくくなるという。慣れないうちは入れた方の鼻や口から液が出ても問題ないという。
注意点もある。鼻と耳は管でつながっているため、洗浄液が耳の方へ流れると中耳炎や痛みの原因になる恐れがある。また、粘膜を保護するため、過度な鼻うがいは控えたほうがよいと話す。
猛威を振るうインフルエンザ。室温や湿度の適切な管理や帰宅後の手洗いに加え、鼻うがいの実践で、感染リスクを最小限に抑え、健やかに新年を迎えたい。
