アメリカの大統領に再び就任すると同時に、さまざまな政策を打ち出すトランプ大統領。
そんなトランプ大統領の考え方や言動にどんな特徴があるのか。国際関係アナリスト・北野幸伯さんの著書『新版 日本の地政学』(育鵬社)から、一部抜粋・再編集して紹介する。
「アメリカのためだけ」に動く
2025年1月20日、大統領に返り咲いたトランプ氏のことをお話ししましょう。
世界中の誰もが知っていることですが、トランプは、とてもユニークな人物で、これまでの歴代大統領とは全然違っています。しかし、彼は2017年1月から2021年1月まで大統領を務めたことがあり、私たちはトランプの特徴を理解することができます。いくつか挙げておきましょう。
・アメリカファースト
これは、トランプが掲げているスローガンで、世界中の人に知られています。トランプは「世界のため」ではなく「アメリカのためだけ」に動いている。

・お金ファースト
トランプほどお金にこだわる大統領はいないでしょう。彼にとって、「儲かるか、儲からないか」は、とても重要です。
例えば、世界最大の軍事同盟NATOのことを考えてみましょう。32カ国からなるNATOは、これまでの大統領にとって、アメリカ最大の「資産」でした。
アメリカは、この巨大軍事同盟の「ボス」なのです。傘下には、イギリス、フランス、ドイツのような大国もいる。ところが、トランプから見ると、NATOは「負債」に見えます。なぜでしょうか?
トランプは、「強いアメリカが、自腹を切って残りの弱い31カ国を守ってやっている」と考えている。弱い31カ国のせいで、アメリカからお金が出ていくので、「NATOは損だ、負債だ」と。
「金を払って、なおかつ守ってやるのは理不尽だ」「普通は守ってもらう方が、守ってくれる存在にお金を支払うべきだろう」と考えているのでしょう。
論理は理解できます。普通、守ってもらう人は、守ってくれる警備会社にお金を払うでしょう?警備会社が私たちにお金をくれて、なおかつ守ってくれることはありません。
そこでトランプは、他のNATO加盟国に、「防衛費をGDP比5%に上げろ」と要求しています。これ、日本でいえば、防衛費を現在の約8兆円から、30兆円まで3.75倍引き上げなければならない。
「かなり無茶な要求」です。トランプ的には、「守ってほしければ、金を払え!」ということなのでしょう。
群れで行動しない
・単独行動主義
アメリカの歴代大統領とトランプの顕著な違いは、「群れで行動しない」ということです。例えばバイデンは、ウクライナに侵攻したロシアに対し、アメリカだけでなく、日本、欧州、オーストラリアなど、できるだけ多くの国々を巻き込んで制裁を科そうとしました。
実際、ロシアに制裁を科し、ウクライナを支援している国は、50カ国以上です。バイデン的には、「その方が有効だ」ということなのでしょう。