揺れる国際情勢のなかで、日本が今後進むべき道はどこにあるのだろうか。

世界情勢と地政学をもとに日本が生き残り反映する道筋を解き明かす、国際関係アナリスト・北野幸伯さんの著書『新版 日本の地政学』(育鵬社)から、一部抜粋・再編集して紹介する。

日本政府に必要な視点

トランプは、同盟国である日本にも容赦なく高い関税を課してくる。「防衛費をGDP比3%にしろ!」と無茶な要求をしてくる。これらの理由で、アメリカと距離を置き、もう一つの超大国である中国に接近したくなる。

理解できますし、自民党政権は、実際そのように動いているように見えます。

日本としてはこれから3つの視点で動く必要がある(画像:イメージ)
日本としてはこれから3つの視点で動く必要がある(画像:イメージ)
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しかし、日本政府は、短期の利益ではなく、「長期的視点」「大局的視点」「大戦略的視
点」で動く必要があります。

第2次世界大戦時のことを思い出してみましょう。大戦が始まったのは、1939年9月でした。この時点で日本は、まだドイツの同盟国ではありませんでした。日独伊三国同盟が成立したのは、1940年9月です。日本は、ドイツ、イタリアの同盟国になりました。

これが、「破滅的な判断ミスだった」ことは、現代の私たちから見ると明白です。

では、なぜ日本は、ドイツ、イタリアを同盟国に選んだのでしょうか?大きく二つ理由があるでしょう。

一つ目の理由は、日本の主敵がアメリカ、ソ連と思われていたことです。

「万民平等」を掲げる共産ソ連は、「世界から王制をなくす」という思想を持った国でした。さらに、「無神論」ベースで宗教を厳しく弾圧した国でもあります。共産主義者は、当然日本の皇室も「なくしてしまえ」という思想を持っています。ですから、日本にとっては常に敵でした。