不在・有害な夫との関係
日本でも、この数年は男性の育休取得が推進されていますが、子どもが成人して性犯罪事件を起こした加害者家族の両親はすでに50代、60代がボリュームゾーンです。
彼らのなかには、夫は家庭を顧みずに仕事という大義名分のもと長時間労働に明け暮れ、家事や育児は妻のワンオペ…といった家族モデルが少なくありません。

そのような家庭では、性犯罪に限らず子どもがなんらかの問題を起こした際、「自分は仕事で忙しくて家のことは妻に任せていたから」と、夫が妻に責任を丸投げする構図が見られます。女性のケア労働のもとに成立する男性の経済活動といった構図です。
「母親の会」では、「夫から『お前のせいで息子はこうなったんだ』と言われた」など涙ながらに語る参加者もいます。
また、加害当事者に話を聞いても、多くの場合、父親の話は鮮やかに抜け落ちているか、もともと父親との関係性がすこぶる悪く、口を開けば悪口しか言わないかのどちらかです。「不在の父親」か「有害な父親」か、父親に関しては、どちらかのエピソードしか表出しないという特徴があります。
裁判でも見られるジェンダーバイアス
この子育て自己責任論をさらに強化する「母親への責任転嫁」は、性犯罪の加害者家族に限った話ではありません。