梅雨は家の中の湿度が上がり、カビ繁殖のリスクが高まる。そのカビが“命にかかわる病気”を引き起こすことがある。発熱、咳の症状が長く続く「夏型過敏性肺炎」だ。見逃されがちな症状と予防策を医師に聞いた。
カビを吸い込むことで発症
春から夏にかけては寒暖差が大きく“夏風邪かな?”と思っていたら、実はまったく別の病気だった…ということがあるかもしれない。
特に、湿度が高い6月から10月にかけて発症しやすく、風邪に似た症状が出るのが夏型過敏性肺炎だ。

この病気について、福井県済生会病院呼吸器内科の白崎浩樹医師に話を聞いた。
「夏型過敏性肺炎はアレルギー性肺炎の一種で、トリコスポロンというカビが室内で生え、その胞子を吸い込むことで肺炎の症状が出る。発熱や咳、息切れの症状があり、風邪や肺炎と区別できない」
重症だったり、治療が遅れたりすると命にかかわることもあるという。

家にいると悪化、外泊すると症状が和らぐ
見分けるポイントの1つは「家に原因があるので、家にいると症状が悪化するが、外泊すると症状が和らいだりする」こと。
家に戻ると症状がぶり返す、というのが夏型過敏性肺炎の典型的なパターン。ただ、夏に“長引く風邪”として見過ごされがちだ。

敵は“湿気が大好き”
白崎医師は「一般的に築年数が経った木造住宅はカビが生えやすく、夏型過敏性肺炎が起きやすい」と指摘。
原因となるトリコスポロンは湿気が大好きなカビの仲間で、風呂場、押し入れ、布団の下などに潜む。

掃除は大事だが、それだけでは不十分で、換気と除湿をセットで行うことが不可欠だ。押し入れなどを重点的に掃除し、布団や衣類は定期的に洗濯・乾燥することが効果的。
「晴れた日は風を入れて換気をしたり、除湿器を使ったりして、エアコンも長年掃除していない場合はカビが付くことがあるので、こまめに掃除することが大切」
そのうえで白崎医師は「夏風邪が続くような場合には夏型過敏性肺炎かもしれない」として受診を勧める。

風邪と見分けるポイント
夏型過敏性肺炎の原因は“カビ”。ウイルス感染の風邪とは以下のような違いがある。
▼熱風邪は高熱で、喉に痛みがあり数日で治るケースも多いが、夏型過敏性肺炎は微熱が「続く」。
▼咳痰が絡む咳が風邪。乾いた咳が長く続くのが夏型過敏性肺炎。
▼呼吸のしにくさ、息切れがあるのは夏型過敏性肺炎の特徴。
ただ、やはり一番分かりやすいのは、家を離れると症状が軽くなり、家に戻ると症状がぶり返すという特徴だ。

カビをためない環境づくりが夏型過敏性肺炎の一番の予防になる。住まいの空気を見直すことも、健康への一歩だ。