新型コロナ・インフルエンザ・マイコプラズマと3つの感染症の同時流行「トリプルデミック」。これに加えていま注意が必要なのが「肺NTM症」だ。完治が難しいというこの感染症。咳や痰が3カ月以上続いている人は感染している可能性がある。

土壌や水辺にいるNTM菌
感染症が流行する中、福井県済生会病院・呼吸器内科の白﨑浩樹医師は「咳が出たり、痰が出たり、息苦しかったりして受診する人が多い」という。

中でも「肺の非結核性抗酸菌症=肺NTM症という感染症が増えている」と続ける。

抗酸菌のグループのうち、結核を引き起こす「結核菌」とハンセン病を引き起こす「ライ菌」を除いた菌を、まとめて非結核性抗酸菌=NTM菌という。それが肺に感染して発症するのが「肺NTM症」だ。

感染経路について白﨑医師は「NTM菌は土壌や水辺など自然の中にいる菌で、そういうところから吸入して感染する。土いじりをしていて土埃を吸い込んだり、シャワーヘッドに菌がついていてそれを浴室で吸い込んだりして発症するといわれている」と説明する。
中高年の女性に多い肺NTM症
2017年の最新の調査では、人口10万人あたりの患者数が19.2人と推定されていて、2007年の5.7人から約3.4倍に増加。1年間に約2万人が感染していて、特に中高年の女性に多く見られる。

ただ、患者数が増えている原因や、なぜ中高年の女性に感染者が多いのかは分かっていないという。
人から人への感染はなし

肺NTM症は非結核性なため、結核とは異なるが、長引くたん、血痰、体重の減少と、症状が似ている。
大きな違いは「人から人へ感染しない」こと。症状の進み方も、結核は急激に悪化することがある一方、肺NTM症はほとんどが緩やかに進行する。

完治は難しく薬で症状をコントロール
白﨑医師は「結核の場合は一部を除いてほとんど完治するが、残念ながらこの肺NTM症の完治は難しい」と話す。

軽症のうちは様子を見ることもあるが「進行した場合には、3種類ぐらいの薬を長い期間、飲んで病気の勢いを抑え、重症化を防ぐような治療が主体になる」という。
日常でできる感染対策
NTM菌は土壌や水回りなど自然にいる菌で、感染しても必ずしも発症する訳ではないという。ただ、日常の中で感染を防ぐには以下のような対策が挙げられている。

<NTM菌の感染対策>
・ガーデニングなどで土を触る場合はマスクをする
・浴室は綺麗に乾燥させる
・シャワーヘッドはぬめりをとり、時々よく清掃する。

肺NTM症は慢性の病気で、治りにくいのが大きな特徴。3週間程度が1つの目安といわれていて、咳やたんが3週間以上続く場合は、必ず医療機関を受診しよう。