真夏のような暑さが続いたかと思えば、じめじめとした暑さに。そんな梅雨時期に注意が必要なのが「梅雨型熱中症」だ。怖いのは、自分でも気づかないうちに脱水が進んでしまうこと。特徴や予防法を医師に聞いた。
梅雨明け間近に熱中症による搬送が増加
梅雨型熱中症について教えてもらったのは、福井県済生会病院の前野孝治医師。
「真夏は35度を超えるような暑さで、どんどん汗をかいて水分摂取が追い付かず熱中症になりますが、梅雨の場合はそれほど気温が高くなくても熱中症になります」

福井県内で2024年に熱中症により救急搬送された人の数は、梅雨入り頃から増えはじめ、梅雨明け間近に最も多くなっている。

私たちは体温が上がると汗をかくが、その汗が蒸発(気化)するときに空気中に熱を逃すことで体温を調整している。
ところが湿度が高い梅雨時期は、この働きが低下する。“汗は天然のクーラー”といわれるが、汗が蒸発しないことには効果が出ない。梅雨のような高湿度の環境では汗が蒸発しづらいため、熱が体にこもりやすく熱中症のリスクが高まるのだ。

2週間ほどかけて“汗をかく練習”を
また、この時期は体が十分暑さに慣れていないことも、熱中症になりやすい要因の一つ。「体がまだ汗をかく態勢になっていない、急に暑くなった頃が危険。暑熱順化(体を暑さに慣らす)には2週間ほどかかると言われているので、軽い運動をしたりして汗をかく習慣をつけることが大切」と前野医師。
ウォーキングをしたり、ゆっくりと湯船に入ったりすることで、汗をかく練習をしておくと効果的だという。

さらに前野医師は、この時期の熱中症は症状の現れ方にも特徴があるという。「じわじわと脱水が進行する。なぜかというと、空気が湿っているので喉があまり乾かず、水を飲む行為に結び付きにくい」
大量の汗をかき急激に脱水が進む真夏と比べてゆっくりと症状が進むため、知らず知らずのうちに熱中症になることもあるという梅雨の時期。前野医師は、喉が渇いていなくても、時間を決めて水分補給をすることを勧める。

時間を決めて水分摂取、エアコン設定は室温と湿度に注意
例えば、起床後や寝る前、お風呂の前後、外出の前後などに水分をとると決めておくと良い。冷たい飲み物を一気に飲むと胃に負担をかけるため、常温の水やお茶をこまめに飲むのがポイント。
また、エアコンを適切に使うことも大切だ。設定温度ではなく、実際の室温が28度、湿度が40~60%を目安に保つようにしよう。

最後に、注意していても熱中症になった場合の対処法も聞いた。
「木陰など涼しい場所で水分をとって元気になればよいが、そうでない場合はすぐに医療機関に。意識がはっきりしない場合は、その時点ですぐ救急車を呼ぶこと。救急車が来るまでに衣服をゆるめて風を送るったり、脇の下や首など血流の多いところを冷やすなどの応急処置をすること」
体が暑さに慣れていない時期に、じわじわと進行する梅雨型熱中症。“まだ6月”と油断せず、しっかりと予防しよう。

【梅雨型熱中症になる要因】
▼湿度が高い
▼体が暑さに慣れていない
▼じわじわ進行し気付きにくい
【梅雨型熱中症の予防法】
▼ウォーキングやゆっくり湯船に入ることで汗をかく練習をする
▼喉が渇いていなくても時間を決めて水分補給をする
▼エアコンなどを適切に使う