食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「ハンバーグ」。横浜市港北区・日吉にある「洋食 プクプク亭」を訪れ、多い時は1日で150個以上も出る、店の看板メニューを紹介。
肉の旨味を引き立てる、自家製デミグラスソースと西洋わさびのタルタルソースの秘密にも迫る。
長年親しまれるアットホームな洋食店
植野さんがやってきたのは横浜市港北区にある「日吉駅」。渋谷からは東急東横線で約20分、駅の東側は「慶応義塾大学」のキャンパスがある。

学生街という側面もあるほか、西側の街並みは駅から道路が放射状に広がり、通りの名前がついた4つの看板が駅をぐるりと囲むように規則正しく並ぶ。それぞれの通りには商店街があり、多彩な店が立ち並び活気にあふれている。

店は日吉駅から徒歩2分のビルの2階にある、洋食店「プクプク亭」。開店前から大人気で、木のぬくもりを感じる店内はカウンター席もあり、おひとり様でも気軽に立ち寄れる。
店主の舟橋斎さんは料理人歴45年以上、そして妻の奈美子さんが温かな接客で迎えてくれる。

アットホームな空間の中、多くの客が頬張るのが、ふんわりした卵焼きで包まれた「オムライス」、玉ねぎをたっぷり使い、噛み締めると肉汁が口いっぱいに広がる「メンチカツ」。
オーブンでジューシーに焼き上げた「チキンカツチーズのせ」。深いコクとまろやかな甘味、夏限定の冷製スープ「ビシソワーズ」など。腕によりをかけた洋食の数々は、どれもおいしいと大評判だ。
常連客も「全体的に何を食べても美味しい」「生まれて初めてこんな美味しいものを食べた」「20年ぐらい通っている、料理が美味しい事と家族的な雰囲気がある」と絶賛。ついつい食べ過ぎちゃうほど大満足の味で、何度も足を運びたくなる洋食店なのだ。
味と同じくらい大切にしていること
「最初から洋食を…?」と植野さんが尋ねると、舟橋さんは「小学生の時からやろうと思っていた」と話す。
それからフランス料理店などで修業を重ねたのち、31歳のとき念願の洋食店を開店。そこで出会ったのが妻の奈美子さんだった。

奈美子さんとのなれそめを聞かれると、舟橋さんは「うちのお客さんだった。この人の笑顔に惹かれて、駅で待ち伏せして…」と笑う。一方、奈美子さんも「主人の『いらっしゃいませ』という元気な声がすごく良かった」と振り返った。
その舟橋さんの元気なあいさつは、いまも厨房から聞こえる。そして美奈子さんの接客は「お客さん、妊婦さんだからいつもより(肉の火入れ)気を付けて…」など、客に寄り添った優しさにあふれている。

美奈子さんが接客で気を付けていることはとにかく話しかけること。舟橋さん夫婦が味と同じくらい大切にしてきたのが「人とのつながり」。この店が長く愛されてきた理由はそこにもある。
4年後には記念すべき50周年を飾る洋食プクプク亭だが、現在は一時休業中。しかし、夫婦は再開を目指して前を向いている。
こちらが本日のお目当て、洋食プクプク亭の「ハンバーグ」。
一口食べた植野さんは「デミグラスソースの香ばしい美味しさと鮮烈なタルタルが口の中で融合している」と絶賛していた。
洋食プクプク亭「ハンバーグ」のレシピを紹介する。