「空撃ちしていたのを見ただろう?」
Xは弱々しく木下に問いかけたが、木下は毅然とした態度で「そんなものは見ていない」と頑として否定しきった。
事実と違うことをこれだけしつこく聞かれ続けていたら、抗議するか、途中で怒りだして退席し、2度と出頭要請に応じないのが普通の人間だ。
しかし“オラオラ“の木下は淡々と調べに素直に応じる姿勢を徹頭徹尾貫く。
「もし仮に空撃ちなど目撃していないのであれば、こんな不当な調べには自分だったら耐えられない。”オラオラ“ならなおさらだ」と特捜本部員は口を揃えた。
【秘録】警察庁長官銃撃事件28に続く
【執筆:フジテレビ解説委員 上法玄】
1995年3月一連のオウム事件の渦中で起きた警察庁長官銃撃事件は、実行犯が分からないまま2010年に時効を迎えた。
警視庁はその際異例の記者会見を行い「犯行はオウム真理教の信者による組織的なテロリズムである」との所見を示し、これに対しオウムの後継団体は名誉毀損で訴訟を起こした。
東京地裁は警視庁の発表について「無罪推定の原則に反し、我が国の刑事司法制度の信頼を根底から揺るがす」として原告勝訴の判決を下した。
最終的に2014年最高裁で東京都から団体への100万円の支払いを命じる判決が確定している。