2025年も多くの「保護猫」たちが新しい家族に迎えられた。長野県塩尻市出身で2024年パリオリンピック柔道・金メダルの出口クリスタ選手も4匹の「保護猫」と暮らしている。猫たちとの「幸せな時間」が強さの源となっている。
保護猫の「美海」
2025年、注目されたのが皇室ゆかりの猫「美海(みみ)」。
「美海」は保護猫で、2025年8月、生後4ヵ月半で天皇ご一家に迎えられ、愛子さまの誕生日に公開された。
長野県内のニュース番組「NBSみんなの信州」でも「わが家のあいどる」に登場した「プレジ」。大きな体とふてぶてしい態度が人気を呼んだ。
小諸市の文具店で迎えてくれたのは、SNSでも大注目。店長の「シマ子」と見習いインターンの「シポ子」。
皆、かつては行き場のなかった「保護猫」だった。
飼い主の入院で39匹が置き去りに…
猛暑の夏には「多頭飼育崩壊」も。
7月末、飼い主(60代男性)が突然入院し、長野市の住宅で猫39匹が置き去りになった。
保健所が保護してお盆に譲渡会が開かれた。
39匹のうち37匹が新たな家族の元へ。
保護猫を引き取った女性:
「性格も出来上がってますし、今まで暮らしていた環境と全然違う所に来ちゃったんで、毎日ちょっとずつちょっとずつ近付いてきてるのかなって思いながら」
今も2匹が保健所で人馴れ訓練中。
2025年、長野市保健所に収容した猫は153匹。このうち137匹が新たな家族と出会い、それぞれの生活をスタートさせた。(猫は収容153匹、譲渡137匹、安楽死・自然死12匹 ※2025年1月1日~12月17日・長野市保健所)
出口クリスタ選手の強さ支える4匹
保護猫に愛情を注ぐのはあのメダリストも。
出口クリスタ選手:
「私も、保護猫を応援しています!」
塩尻市出身の出口クリスタ選手(30)。
2024年のパリオリンピックでは柔道女子57キロ級で金メダルに輝いた。
その強さを支えるのが…。
出口クリスタ選手:
「ツナ、マヨ、シャケ、ムー(ムスビ)」
おいしそうな名前の4匹の保護猫。
出口クリスタ選手:
「お皿が決まってて、うちの猫ちゃんと順番守るんです」
駅に子猫が…友人から深夜にSOS
最年長「ツナ」との出会いは7年前。大学を卒業し1人暮らしを始めた春だった。
出口クリスタ選手:
「寮の近くでツナ缶を食べて生きている子がいるって聞いて、この子このままじゃ自然に生きていくのが難しいかなと拾ったのが一番最初のツナ」
その後も、2匹、3匹と家族が増え、2022年の5月には深夜に友人からSOSが―。
出口クリスタ選手:
「駅に子猫がいっぱいいて母親もいなくて、(友人から)『ちょっとどうにかならない?』って言われて。4匹いたんですよ、子猫が。妹と一緒に行って1匹ずつ引き取ったのが“ムスビ”。これ以上(引き取る)はうちが無理だからおにぎりの形にして終わりたいっていうのと、縁があって家にきたからムスビ(結び)って名前」
モフモフに顔をうずめ「猫エステ」
猫たちはクリスタ選手の帰宅を、喉を鳴らして待っている。
厳しい競技生活を支えているのが個性的な4匹だ。
出口クリスタ選手:
「家の中は幸せな空間にしておくことでメンタルの回復を図ってる」
中でも異彩を放つのが3番目に迎えた「シャケ」。
猫じゃらしのおもちゃで「ムスビ」が遊んでいるときも、「シャケ」は猛スピードで駆け抜けていく。
出口クリスタ選手:
「シャケはブーンってどっか行ってブーンってまた通り過ぎていく。ジャンプが下手なんですよね、走るだけ。その姿をスローで撮ってスクショしてフォルダに入れて見てニヤニヤ楽しんでます」
冬は何といってもこれ。
モフモフした4匹に顔をうずめる名付けて「猫エステ」。
静かで温かい休息の時間。
出口クリスタ選手:
「安心感だったり、もうなんか面白いことを日々提供してくれる。ただ家に帰ってぼーっとしてるだけじゃなくて、一緒にその時間を共有してくれる仲間が4匹いるって感じ」
オリンピック期間中は家族が世話
海外遠征も多い忙しい生活。
家を空けるときは近くに住む妹など信頼できる人に世話を頼んだり、逆に引き受けたり、助け合う。
オリンピックイヤーの2024年は、長期間、猫たちと離れ離れだったが―
出口クリスタ選手:
「おばが残ってくれてたんで、うちの猫とケリーの猫も全部おばあちゃんの家で(おばに)面倒みてもらいました」
信頼できる家族。
そして猫たちの存在が、世界一の強さを生んだ源だ。
出口クリスタ選手:
「4匹の命を預かっている身ではあるので、ちゃんとしたものを与えたいと思うし、いいキャットタワーとテレビ台も猫仕様になってるからね、それも安くはなかったからね。なかなか洗脳されてますね、猫に。うまい具合にあいつらこう(手の上で)やってますよ、私を。私は猫がいて人生が豊かなんでいい出会いだなとは思っています」
「最初は新聞広告を見て、もらった子」
動物愛は幼少期から。
家族が保護活動に関わるなど、身近に当たり前に動物たちがいた。
出口クリスタ選手:
「一番最初の猫は新聞の広告を見てもらった子で、2匹目は近所でいっぱい産まれちゃった猫をもらってきたりとか、そういう環境で育ったので、それが当たり前みたいになっちゃっている。年末年始とか、(4匹を)長野の実家にも連れて帰って、ケリーは犬を連れて帰るかな?にぎやかですね」
行き場のない野良猫に心痛め…
クリスタ選手が練習拠点とする山梨学院大学。
緑豊かなキャンパスの周辺では、多くの野良猫の姿を目にするという。
出口クリスタ選手:
「ここ来たら野良猫がえらいいるから、驚いたのは覚えてます。衝撃だった。学生とか人が集まる場所って誰かしら(野良猫に)ごはんあげたりする。毛が抜けちゃったり、ガリガリになってる子も、風邪ひいて目ヤニがすごい子もいっぱいいたし」
行き場のない猫に心を痛める一方、注目している取り組みがある。
出口クリスタ選手:
「今できることは“地域猫活動”、去勢避妊をして、これ以上の繁殖を減らす。ロードキル(死亡事故)もあるし、そういうのはなるべく減らしたいです」
駅前で暮らす名物猫“みいちゃん”
「地域猫活動」とは、野良猫に不妊化手術を行い、地域の住民が世話をし管理する取り組みだ。
バスの券売所で観光客と触れ合うのは、南木曽町の駅前で暮らす地域猫の「みぃちゃん」。
地元の住民を癒すなんとも言えない愛らしい表情。
放送後は多くの反響が寄せられた。
「人間と共存し猫の幸せを」
1匹でも多くの命に温かい居場所をー。
そんな思いで、今、保護活動への寄付など、できる支援を続けている。
2025年2月には、長野市保健所で開かれる「地域猫講座」に参加し、ペットと暮らしている人暮らしていない人、多くの人と一緒に考えたいと話す。
出口クリスタ選手:
「猫の幸せはやっぱり人間との共存が前提だと思う。ペットを飼ったことがない人や、ペットにあまり興味関心がない人にも少しでも届くような、少しでも力になれればと思います」
