2024年10月に行われた衆議院解散総選挙で獲得議席が公示前の4倍となる28になったことで存在感が増している国民民主党。党を切り盛りする榛葉賀津也 幹事長(参議院静岡選挙区選出)が単独インタビューに応じ、玉木雄一郎 代表が不倫問題で役職停止となる中で自身の役割などについて語った。
“予期せぬ”衆院選での躍進
-公示前にこれだけの躍進を成し遂げられるという想像は自身の中でしていらっしゃいましたか?
国民民主党・榛葉幹事長:
はっきり申し上げて、していませんでした。なんとか現状維持プラスアルファという風に考えていて、当時(衆議院議員が)7名しかいませんでしたから、なんとか10人超には持っていきたいなという思いはありましたが、ここまで躍進させていただけるとは思っていませんでした。
-選挙戦が終盤に差し掛かるに従って、街頭演説に集まってくる人の数やSNS上の盛り上がりなど手応えがあったと思いますが、ターニングポイントはありましたか?
国民民主党・榛葉幹事長:
やっぱり他の野党が政治とカネで自民党批判に集中する中で、我々は安易な批判をする選挙ではなく具体的な政策に特化しようと、それが103万円(の壁)だったんですね。その103万円を愚直に訴えていく途中で(街頭演説に)人がものすごく出てき始めたんですよ。あれ?と。これ波が来ているな、と。
後半はちょっと信じられないくらい。動員は一切かけていないんですよ。東京駅の玉木(代表)の最後のファイナルの演説もそうですけれど、もう本当に群衆が押し寄せてきて。私の演説でも何も告知しなくても300~400という数の有権者の皆さんが集まったので、「これはいけるかも」というのがありましたね。やっぱりコンテンツ、つまり政策がしっかりしていた。これが一番の大きな勝因だと思います。

-人が出始めてきたのは、どのくらいのタイミングだったか覚えていますか?
国民民主党・榛葉幹事長:
選挙の前半からですね、ネットでの切り取り(動画)がものすごい勢いで回っていたので、ある種(東京都知事選の)石丸(伸二)さんの選挙に近い。SNSが回っていたので、「これ、いけるかな」と。我が党はどちらかというと若年層、10代~20代に人気のある政党と言われていたんですが、女性や高齢者もものすごく応援に来てくれたので、「あ、これは地殻変動が起きているな」というのは感じましたね。
-具体的な政策の提案というお話がありましたが、改めて今回これだけ数字を伸ばせた、評価された部分というのはどういうところにあると感じていますか?
国民民主党・榛葉幹事長:
あの103万円の壁は最初、大学生がメールで「バイトをしたいけれど、これ以上バイトできない。何とかしてほしい」ということから始まって「これやろうよ」と。
よく国民民主党は先輩方から「若者や働き手の政策ばかりやっている」ということでお叱り受けていることが多かったんですけれども、逆に現役世代の給料や手取りが上がらないと年金が上がらないという、難しい言葉で言えば“マクロ経済スライド”。簡単に言えば、現役の給料が上がれば年金もスライドして上がるというのが、皆さん段々はたと気がついていただいて、「玉木・榛葉が言っているのは若者だけではなくて、これから日本を支える若者がしっかり働けて稼げて、そこが子供たち、そして高齢者の皆さんを支えてくれているんだから、やっぱり日本という国の大黒柱を強くするのは理にかなっているね」と。「いま税金を取りすぎているのだから、それを国民に戻していくんだね」と。「あ、それが積極財政ということか」ということが皆さんピンと来ていただいて、しかも我々は一切自民党の批判をしませんでしたので。まあ一切というか「正直な政治をやろう」と。「だから裏金はダメだね」と。
でも、それだけではなくて政策は何をやるんだ?「国民民主党はこれをやります」と。野党第一党は“政権交代”と言うけれども、我々は衆院選前(の議員数)は7人ですから、政権交代ではなくて、「我々の政策をいまの与党に呑ませるんだ」「現実的な政治やるんだ」と、これを愚直に訴えたのがやっぱり良かったんじゃないかなと思いますね。
“本当”の全国政党になるために
-一方で28議席とはいえ、まだまだ野党1党には遠く及ばない数字となっているわけですけれども、いまの国民民主党に足りない部分、今回の衆院選で足りなかったという部分は何かありますか?
国民民主党・榛葉幹事長:
1つの反省として、本当は28人ではなくて31人だったんですね。(注:衆院選で比例名簿に登載された候補者数が獲得議席数を下回り北関東ブロックと東海ブロックで計3議席を他党に譲った)ところが我々にも体力の限界、つまり1人の候補者を出すと莫大な金額がかかるんですね。勝っても負けてもかかります。法定得票数を取れなければ供託金を没収されますから、あれが我々の正直マックス、実は体力以上の候補者を立てたんです。
ところが、それでも全員当選してしまって、特に東海は2人比例の枠を他党に譲らざるを得なかったというのは、本当に申し訳なく思うんですけれども。
まだまだ足りない点というのは圧倒的過半数以上が新人議員ですから、(衆議院で)政治経験があるのは元々7人ですからね。これから新人をどう教育していくのか、そして即戦力としてどう育てていくのか。
そして今度は参議院ですね。この参議院と地方組織。これがやはり党の土台になりますから、この地方議員をどうやって増やしていくかということが1つの大きなテーマだと思います。
「国民民主党は変わっていない」
-国民民主党は「対立・対決より解決」ということを結党以来訴えて来たと思いますし、「現実的な政策を」ということを訴えて来た一方で、なかなか支持率が上がってきませんでした。しかし、今回の衆院選ではこのような結果を出せたという中で、これは国民民主党が何か変わったのか、変えたのか、それとも国民のマインドが変わってきたのか、そのあたりはどのように感じていますか?
国民民主党・榛葉幹事長:
国民民主党は正直変わっていません。玉木を中心に我々仲間が全員野球で政策を訴えると。
変な話、玉木がチョンボしたでしょう。あれで支持率が落ちると思ったら、あの後も支持率はどんどん伸びていって、実は先日のアンケート(世論調査)では立憲民主党よりも支持率が上回ったんですね。立憲民主党さんは160名以上いて、我々は衆議院28人でしょう。参議院を入れても40人弱。その党が(野党)第1党よりも支持率が高くなったっていうのは、皮肉ですけれども、玉木のチョンボで全国的に「あっ、玉木さんの党なんだ」「国民民主党なんだ」と。「あ、103万円の壁をぶち破ろうとしたり、ガソリン減税をやろうと頑張っているのは国民民主党なんだよね」と。で、「あの党って対決より解決とか言って批判政党じゃないよね」と。
やっぱり政策がしっかりしていて、我々は訴える方法、特にネット上では非常に多くの方に関心を持っていただいて、このうまい相乗効果がいま支持率のアップにつながっているので、ただ、これをどう維持して、もしくは伸ばしていくのか、これからが勝負だと思っています。

-ようやく国民民主党という存在が認知されたということでしょうか?
国民民主党・榛葉幹事長:
私はやはり物事の真理は真ん中にあると思うんですよ。中道中庸。ただ、政治や選挙は関心を得ようとすると極端なエッジが効くんですよね、食べ物じゃないけれど、激辛とか。政党も右にものすごく行ったり、左に極端に行ったり、今までの政治はそれがどんどん極端になっていって、(有権者が)「選択肢は結局、自民党しかないんでしょ?」「野党第1党ってやっぱり政権を取る気がなく、批判ばかりしているけれど、やっぱり自民党もダメかもしれないけれど、野党もダメだよね」と。
そこに当たり前だけれど対決より解決で、政党同士が悪口を言い合ったって国民の生活はまったく良くなりませんから。私が新橋の街頭演説で、「与党と野党が『お前の母ちゃんでべそ』と言い合ったって子供の腹は膨らまない」と言って、あの時にピンと潮目が変わったなと思ったんです。あの時、やっぱり群衆がグッときて、その動画もものすごく回ったんですけれども、やっぱり「自民党がダメなのはわかったけれど、じゃあ野党は何をやるんだ?」と、そこで国民民主党が愚直に政策を訴える。
それで国民の皆さんが「こういう政党があるんだ」「この政党を我々は探していたんだよね」というのをものすごく感じて、いま一番私たちのところに来る支援者で多いのが、自民党(支持)を辞めて国民民主党に来るというのが一番多いですね。
玉木代表が役職停止となる中で
-政治の世界で見た時に、今回の玉木代表のエラーが党内外における求心力や発信力に影響を及ぼすという懸念はありますか?
国民民主党・榛葉幹事長:
それがないようにするのが幹事長の仕事なので、当然、不快に思われたり、許さないと、「もう国民民主党、玉木はダメだ」という人は正直います。それはもう彼が背負わなければならないし、党に対する失望・批判は幹事長の私が受けなければならないと思います。
ただ、私はどんないい時もつらい時も玉木を支えるのが私の役割なので、すべてを甘受してしっかりと遠心力がないように、もしくは失望を与えないように政策実現を頑張る。いまのタイミングは税制改正をやっていますけれども、これがとても大事な時期だと思います。多くの皆さんは「玉木、こらっ!」「何やっているんだ!」と。でも「絶対に政策は実現するんだぞ」「あきらめるな」という声が多いので、いま、まさにやっている103万円の壁を178万円まで持っていけるように、まさに交渉の真っ最中なので、それをやりきることで失望を信頼に変えたいと思っています。

-玉木代表の処分をめぐっては、役職停止ないしは解任が妥当という答申だったと思います。そうした中で、幹事長主導の中で3カ月と区切ったわけですけれど、どういった判断から3カ月と最終的に設定したのでしょうか?
国民民主党・榛葉幹事長:
代表に対する懲罰なので異例中の異例なんですよね。最初は役員会での厳重注意。プライベートのことですので、役員会での厳重注意が適当ではないかと様々な弁護士さんや有識者のアドバイスを聞いていたんですけれども「それでは甘いだろう」と。
やっぱり一定期間、玉木自身に政治家としての原点に、初当選の原点、そしてこの党を立ち上げた結党の原点に戻ってもらうためにも一定期間の役職停止をしようと。これは倫理委員会の委員長の判断で、私も「それが妥当でしょう」と。
あとは長さですね。1カ月という声もあったんです、年内と。年が明けてリフレッシュして頑張ろうと。しかし私は「1カ月では甘い」と。この1カ月・2カ月・3カ月が補正予算、年末の税制改正、そして年明けていろいろな新年の行事、当初予算の始まり、予算編成もありますから、めちゃくちゃ大事なこの3カ月に代表が実質不在であるというのは本人もつらいですけれども、被災地をはじめ全国回ってほしいと。47都道府県すべて回ってですね、やっぱり党勢拡大と原点に返ってみんなに訴えてほしい。その間、逆に我々は玉木の分までみんなして頑張らなければならないので、多く結党から支えてくれたメンバーも改めて「あっ、玉木さん、大事だったね」というか、「これを全部玉木さんにやってもらっていたよね」という、我々も原点に返るきっかけにしなければならないと思っているので、そういった意味で3カ月というのは妥当だったんじゃないかなという風に思っています。
(テレビ静岡)