長崎の秋の風物詩「長崎くんち」を前に、2024年に出演する踊町とその見どころを紹介する。五嶋町の龍踊は、若さと迫力を武器に、新しい伝統を築こうとしている。

400年の歴史に新たな息吹を

五嶋町の龍踊は62人の龍衆たちが長さ約20m、重さ120kgの巨大な龍を操る。

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「龍踊」は龍が不老長寿の源とされる「月」を飲み込もうと珠を追い求め、長崎に豊かな実りを約束する「雨」を呼び込むといわれている。

海沿いに開かれた町「五嶋町」
海沿いに開かれた町「五嶋町」

五嶋町は400年以上前に海沿いに開かれた町で、五島列島からの移住者が多かったことが町名の由来とされている。

長崎くんちでは明治以降、主に本踊を奉納してきたが、2000年に大きな転換点を迎えた。町民総出で作り上げるものを」という思いから、当時の青年会が中心となって「龍踊」の奉納を決めたのだった。

進化を続ける五嶋町の龍踊

10年前の前回の奉納では、それまでの「青龍」に「白龍」が加わり、2体での共演が実現した。

2014年の奉納
2014年の奉納

さらに、スモークから龍が登場するという新たな演出も取り入れ、「五嶋町流の龍踊」が形作られてきた。

龍踊は基本となる所作で演技が構成されている。

龍が頭を左右にふりながら珠を追う「珠追い」。

とぐろを巻いて隠れた珠を探す「ずぐら」。

珠追いの途中に自らの胴をくぐって身を翻す「胴抜き」。五嶋町は「より速く、より高く、より勢いよく」を目標に掲げている。

若い力が支える伝統

龍踊を奉納する4つの踊町の中で最も歴史が浅い五嶋町は、龍のはつらつとした若さを速さで表現しようとしている。

2024年の龍衆の約6割が、くんち初出演だ。

最年少19歳の村木哲成さん
最年少19歳の村木哲成さん

その中の一人、最年少19歳の村木哲成さんは熊本県出身。長崎大学への進学を機に龍踊部に入部し、今回あこがれのくんちへの出演が決まった。

「五嶋町の龍踊はすごく迫力があるので、迫力のある演技を見せて子どもたちにも憧れを持ってほしい」と村木さんは意気込む。

練習は3月からスタート
練習は3月からスタート

練習は3月から始まり、走り込みなどで体力をつけてきた。6月には龍を使った初めての稽古が行われた。

龍を生き生きと見せるには、上げ下げや左右への振りなど、基本的な動きの反復が欠かせない。龍監督の馬場祐輔さんが「本当にダメ、以上」と厳しく指導する場面もあれば「数打っただけ上手になるから、どんどん積極的に蛇をつかんで振って」と総監督の井出和宏総さんが励ます場面もある。

「7年後も龍踊が出来るように、今の子たちが楽器とか龍衆でも五島町の蛇を持ちたいと思ってくれたら嬉しい」と村木さんは未来を見据える。

62人が思いを込めて命を吹き込む五嶋町の龍。2024年の奉納の成功が、くんちと町の歴史をつなぐ。伝統と呼べるその日に向けて、五嶋町は2体の龍を天高く舞わせる。

(テレビ長崎)

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