宮崎市の中心市街地で、グラス片手に市町村の魅力を語り尽くす「&BAR26」が開催された。今回は宮崎県小林市篇。振る舞いやフルコースの提供を通じて、特産の牛肉・豚肉・鶏肉、鯉・チョウザメ、ブランド米など様々な食の魅力が紹介された。クラフトビールや焼酎、ワインも揃えられ、小林市の魅力を余すところなく発信した。
司会進行は「あけみママ」こと榎木田朱美社長
イベントが行われたのは2025年8月8日。宮崎市高千穂通のコミュニケーションスペース「&LABO by UMK」が会場となった。UMKテレビ宮崎が主催し、イベントの模様はYouTubeでライブ配信された。

司会進行は、「あけみママ」こと、6月にテレビ宮崎の代表取締役社長に就任した榎木田朱美社長。脇を固めるのは、かつて小林市青年団のメンバーとして活躍していた2人。小林市役所健康福祉部の部長、松田和弘氏は市役所を代表してPRに臨んだ。もう1人はテレビ宮崎のバラエティ番組でリポーターとして活躍した経験を持つ長谷川洋さん。現在は農業共済団体の管理職だ。
肩書だけ聞くとお堅い方々だが、トークは実に軽快で絶妙。松田部長は、小林市の魅力として「お肉が美味しい」「水がおいしい」「星がきれい」などを挙げ、今回は特に「食」をメインに魅力を伝えたいと強調した。立て板に水のようにしゃべる様子に榎木田社長(あけみママ)は「こんなにしゃべれる公務員がいるなんて…」と舌を巻いていた。
小林市役所、強力な布陣でPRに臨む
小林市役所からは、個性あふれる強力なメンバーが集結した。

まずは 商工観光課の片地洋平さん。片地さんと言えば、UMKテレビ宮崎の藤崎祐貴アナウンサーと数々の番組で共演し、「相棒」とまで言われる存在。特に「左近太郎対決」は、毎回ハラハラドキドキの名勝負を繰り広げる名物企画となっている。小林市のPRはお任せだ。

畜産課の神之薗寿課長。神之薗さんは「ミシュランシェフ」ならぬ「ミシタンシェフ」と紹介された。「ミシタン」とは、小林弁で「知らない人」という意味だそうだ。要は名もなき料理人ということか。しかし神之薗さんは小林市の様々なイベントで鳥・豚・牛を食材にした料理の振る舞いを得意としている。「きょうは小林が誇る美味しい畜産物を食べて欲しい!」と、やる気満々の様子だ。

小林市役所の「けいこママ」こと、地方創生課の小久保圭子課長。市役所きっての酒豪で、「あけみママに負けないぐらい飲みます!」と、これまたやる気満々だ。この他にもふるさと納税の担当者や畜産課の若手エースなど、強力な布陣でやってきた。
プロの料理人が腕を振るう
本物のプロの料理人も腕を振るった。小林市「日本料理 おおやま」のシェフである大山広行さんと女将の大山りんさん。

大山さんは大阪・船場吉兆の流れを汲む名店で4店舗の統括料理長をしていた経歴を持つ。
今回は小林の食材を使ったフルコースを用意して頂いた。小林づくしを楽しめる。めったにない機会だ。

小林生まれの大山さんは、「どれもオススメで、小林の食材を全部紹介したい」と意気込みむ。調理法については、これまで修行してきた基礎からアレンジし、小林の食材を生かせるように組み立てたという。
柚子のクラフトビールで乾杯!
小林の「食」に期待が高まったところで、待ちに待った乾杯の時間に。

乾杯用のビールは、須木産の柚子を原料に、小林の湧水を使ったクラフトビール「コバヤシニエール」。小林の人たちを応援したい、という願いが込められたビールで、高らかに「乾杯!」の声が響いた。

小林には、地元産品を活かした飲物が揃っている。クラフトビールのほかに、小林生駒高原葡萄酒工房のワイン。こちらは生駒高原で栽培されたワイン専用品種から作られたものだ。

焼酎は、すき酒造の芋焼酎「山猪(やまじし)」と「山雀(やますずめ)」を用意。甕仕込みでつくられており、熟成されてうま味が乗っていくのが特徴。「山猪」は豪傑焼酎と言われ、ガツンと来るタイプ。いっぽうで「山雀」は、すっきりさわやか、甘くてやさしい、飲みやすい焼酎だ。
ソフトドリンクでは「ゆずサイダー」と、あらゆるジャンルの飲み物が揃っている。
「ミシタンシェフ」4品を振る舞う
乾杯の後は、いよいよ小林の「食」を楽しむ時間。まずは「ミシタンシェフ」こと神之薗さんの振る舞い料理を見てみよう。
<振る舞い1品目>
豚の冷しゃぶ 濃厚ゆずポン

こだわりの小林産豚を使った焼きしゃぶに、須木のおろしポン酢を添えた一品。口の中でやわらかくほどける豚肉に、存在感のあるポン酢が良く合う。「暑いのでさっぱりと食べてもらえるように」というシェフの心遣いだ。
須木のおろしポン酢「濃厚ゆずポン」は、ゆずの香りが高い、須木ブランドのひとつ。柚子酢が2倍入っているため「濃厚」とうたっている。肉はもちろん、サラダや焼魚、ギョーザや豆腐にもあう万能つゆで、藤崎アナはヘビーユーザーだとか…
<振る舞い2品目>
小林養鶏の炭火焼き

宮崎名物のひとつとして全国的にも知られる「炭火焼き」 口に入れてみると、「やわらかい!」の一言。そして添えられている「柚子こしょう」が引き立て役として力を発揮している。柚子は、栗と並ぶ小林市須木の特産品。ピリッとパンチの効いた味わいで、炭火焼だけでなく焼酎もすすんでしまう。
<振る舞い3品目>
こだわりのビーフシチュー

ミシタンシェフ、神之薗さんが前日から筋を煮込み、当日の朝から首の肉をあわせて煮込んだというビーフシチュー。うまみが充分とろけだして、1人あたり100g分は宮崎牛が溶け込んでいるという、豪華な一品だ。野菜のうまみ、宮崎牛のうまみ、特性デミグラスが絶妙。

肉は西ノ原牧場「なかにし和牛」を使っている。なかにし和牛は小林市の中心部に販売店やステーキハウスを構えていて、小林の畜産農家の「大エース」と言われている。そんな「なかにし和牛」が贅沢にも、とても大きな肉が入っていた。赤ワインで煮込んでニンニクも効かせた、シェフも自信たっぷりの一品だ。
<振る舞い4品目>
すき栗ジェラート

小林市須木は栗の産地として有名で、このジェラートは「須木栗」を原料にしている。東京のMAISON GIVREE(メゾンジブレー)江森宏之シェフに開発してもらったという。江森シェフは2015年ミラノ万博で行われたアイスクリームとチョコレートのワールドカップで日本代表のチームキャプテンとして出場し、優勝に導いたという輝かしい経歴を持つ。
なぜ、江森シェフに小林市の商品開発をしてもらえたのか。そこには片地さんの情熱があった。片地さんは江森シェフに「須木栗でアイスクリームを作って欲しい」と須木栗を送り続けたという。
小林市商工観光課 片地洋平さん:
須木村には昔、「アイス栗夢(あいすくりむ)」という商品があったが、なくなってしまい、地元の人たちには「復活させて欲しい」という願いがあった。そこで色々なところでアイスクリームを食べてまわり、中でも江森シェフのアイスクリームにほれ込んで、3年かけて口説き落とすことができた。
こんな開発秘話を聞くと、そのままでも美味しいスイーツが、いっそう美味しく味わえるものだ。食べた人からは、「栗をすったような優しい甘さ」「ミルキーな感じも味わえて二度おいしい」などの感想があった。
プロの料理人がつくる「小林フルコース」
続いて今回の目玉、「日本料理 おおやま」の大山さんが小林の食材をたっぷり使ったフルコースを見てみる。

まずは前菜盛り合わせ8品から。どれも小林の食材を使った、魅力あふれる1皿だ。
・くらぞの牛の生ハム
・ダイワファームチーズの白和え
・須木栗の生駒ワイン煮
・味噌ころばかし
・才巻海老キャビア添え
・四元こんにゃく甘煮
・鬼灯とまと
・チョウザメ笹寿司

大山さんの料理を来場者にも堪能して頂こうと、片地さんが選んだ人がカウンターに招かれた。ルールは、食べて「食リポ」をすること。前菜の中からチョウザメを選んだ女性は、つい先日、小林市の出の山公園で生きたチョウザメが泳いでいるのを見たそうで、今回はお寿司で味を堪能することに。「歯ごたえがあって、美味しい」とリポートした。
2品目:椀物
・猪真丈 椎茸 焼葱 清汁仕立て

小林でとれたイノシシを真丈(しんじょう)にしたもの。しいたけとネギを添えている。イノシシの真丈とは、あまり聞いたことがないのではないか。小林らしくジビエを使おうという、大山さんのアイデアだ。イノシシというと「鍋」のイメージで、冬場の食べ物と思われがちだが、大山さんは夏場にも食べてもらいたいと、この料理を作ったそうだ。

試食した人からは、「イノシシの野性味があり、ただの澄まし汁ではない」「出汁にコクがあって別格」「歯ごたえが違う」「でもサッパリしている」などの感想が出ていた。しっかり調理され、匂いや臭みもないという。
新聞でイベントを知り、日向市から来たという女性は、「臭みがなく美味しい。コクと歯ごたえも十分。日向から来てよかった」と話していた。
3品目:造里
・鯉あらい 辛子酢味噌
小林の有名な観光地のひとつ、「出の山(いでのやま)公園」。霧島連山に降った水が20年、30年、50年たってでてくる湧水が有名で、全国名水百選に選ばれている。湧水は18℃前後で、ここで育った鯉は、一度も泥に触れず、ずっと清流で育っているので、臭みがまったくないとだという。

今回はグレープフルーツを利用して盛り付けた上に、カボスとニンジンでつくった「風鈴」を添えて、涼やかさを演出している。目の前に来ただけで嬉しくなりそうだ。

鯉のあらいを初めて食べるという女性スタッフ。からし酢味噌をつけて食べると、臭みがなくコリコリした歯ごたえが良いと話した。小林市のスタッフによると、鯉はしっかりした栄養素もたっぷりとのこと。小林では昔はスーパーで売っていて、お祝い事や青年団の宴会ではいつも食べていたそうだ。
4品目:煮物
・ホエー豚山猪煮

「ホエー」とは、チーズを作ったときにできる上ずみのことで、その「ホエー」を餌に育てた豚を「ホエー豚」という。北海道では結構多い育て方だそうだ。今回の一品は、ホエー豚を小林産の「おから」でじっくりと柔らかく煮込み、焼酎「山猪」で煮込んだという。大山さんの小林食材へのこだわりが生んだ一品だ。
試食した女性は、「ものすごくやわらかい、味が染みている。さっぱりしていていくらでも食べられそう。後になってから、焼酎の風味をほんのり感じる」と話した。
5品目:【止肴】
・富永和牛ロース煮

富永牛は脂が少なめの肉で、今回、大山さんがどうしても使いたかった牛肉。洋食ならローストビーフにするが、今回は和食ということで、合鴨ロースの技法を使って作り上げたという。
最近伸びてきている畜産農家が手掛けた和牛で、餌にこだわって研究を重ね。自ら焼き肉屋もしている情熱ある生産者だという。試食した人からは、「肉の強みがしっかりとある。脂が少なめなので胃もたれせず食べやすそう」などの感想が出ていた。
6品目:ブランド米「須木米」

続いて登場したのは土鍋。「お米」の出番だ。小林市のブランド米、「須木米」は、2020年「米の食味ランキング」で、最高評価の「特A」となった。片地さんによると須木は源流地域、つまり一番上流にあるので水がきれい。加えて標高が高いので寒暖差が激しく、美味しいお米ができるのだという。実は片地さんは兼業農家で、今回の「須木米」は片地さんが作ったもの。まさに「生産者の顔が見える」状態だ。

そんな須木米、今回は「タマゴかけご飯=TKG」で食べてもらおうと、小林市自慢の卵も提供された。その名も「だまって食べて美卵ね」というタマゴ。たべてみらんねとは、「食べてみなさい」という意味。この卵は混ぜるのではなく、箸で「切れる」のだという。これに「野菜のもと なんでんかけ太郎」をかけていただく。醤油とはちょっと違うところが、卵との相性を良くしているとのこと。

タマゴと米、2つの素材に自信があるからこそ、今回はタマゴかけご飯を選択したという。試食した女性は、「卵との相性が最高!卵も甘い、お米も甘い」と話していた。
7品目:デザート(フルーツ:シャインマスカット・梨)

締めのデザートも、もちろん小林産。登場したのは、みずみずしい「ナシ」と皮ごと食べられる「シャインマスカット」榎木田社長(あけみママ)は、死ぬ前に食べたいフルーツは「ナシ」だそうで、美味しそうに食べて、「世の中の甘さを詰め込んだような美味しさ!」と喜びを表現していた。
まだまだ尽きない小林の魅力!
今回のイベントでは、小林の「食」に絞ってPRされたが、他の分野でも魅力はたっぷり。エンタメ界やスポーツ界で活躍している小林出身者も紹介された。
THE RAMPAGEの吉野北人さん。蛙亭のイワクラさん。初代こばやしふるさと大使でもある斉藤慶子さん。歌手のNOBUさん。サックスプレーヤーの宮里陽太さん。K-1チャンピオンの寺田匠選手。水が良い、お米が美味しい小林で育ったからこそ、気力・体力みなぎる彼らがエンタメ界、スポーツ界で活躍しているのだろうか…?

ちなみに会場には、小林市出身ではないが、どこかで見たエンタメ界の人が・・・。
「宮崎住みます芸人」チキンナンゴーの山下翔太さんと、ぶぎーさんだった。実は2人は小林市で米作りをしているとのこと。
ふるさと納税をPR
最後に小林市から、「ふるさと納税」のラインナップが紹介された。小林市役所地方創生課の齋藤貴憲さんと鶴田健介さんがマイクを持つと、まずは驚きの事実が。

小林市地方創生課 齋藤貴憲さん:
本日、食べていただいたものは、すべて、ふるさと納税で入手できます!なんと、おおやまさんの「豚の角煮」も。しかも、山猪で煮込んで作っていますので、焼酎を飲みながら、角煮を食べながら、楽しんでください。

会場には返礼品の一覧が映し出された。宮崎牛、宮崎ブランドポークの豚バラスライス、鶏炭火焼き、旬のぶどう3種食べ比べ、キャビア、卵、ワイン、天然水、焼酎など、あらゆるジャンルの食材が揃っている。
魅力は語り尽くせず…
今回は約2時間にわたって、小林市の「食」の魅力を発信した。最後に会場の人たちに問いかけると、「小林に行きたくなった!」という反応だった。小林市ではこうしたPRを通じて関係人口の増加を目指しているという。そのパワーを味わい、魅力を知り、元気をもらった時間だった。

「&BAR26」では、今後も宮崎県内26市町村との連携を強め、地域の魅力発信と再発見、そして発展に繋げる取り組みを続けていく。次はどこの市町村について、グラス片手にとことん語られるのだろうか?「&Labo」を活用したい市町村の方は、テレビ宮崎または「&Labo」のインスタグラムまで。
(テレビ宮崎)